音楽で成功した人=最高の仕事人である納得の訳 音楽に不可欠な要素はビジネスにそのまま通じる

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そんななか、ハンクは時間をかけ、違ったアプローチを試みる。結果的には、やがて完成した『ザ・グレート・アドベンチャー・オブ・スリック・リック』というアルバムは、『ビルボード』誌のヒップホップ・チャートで1位を獲得。100万枚を超える売り上げ実績を打ち立てた。同作が、いまなお“ヒップホップ・クラシック”として高い評価を維持していることは有名な話だ。

はたしてハンクは、一筋縄ではいかないスリック・リックとの仕事をどのように進めていったのだろうか? この問いに対してハンクは、「俺が決めたのは、あいつのクリエーティブなマインドセットを邪魔しないことだ。あいつの伝えたいことを止めたり妨げたりしないで、レコードを形にすることを優先した」と答えている。

リーダーシップにおいて欠かせない教訓

スリック・リックにはしっかりした考えがあり、自分が完成させたいものを正確に理解しているとハンクは判断した。そこでプロジェクトを引っ張っていくのをやめ、「お前の言うことに従う」と伝えたのだそうだ。

つまり、飛ぶ鳥をも落とす勢いだった売れっ子プロデューサーは、あえて前に出すぎず、アシスタントの役回りを務めたということ。だからこそ、結果的にプロジェクトはうまく進み、スリック・リックのアーティスト・キャリアを代表する傑作を生み出すことができたのである。

このことについて、ハンクは次のように話している。

「俺があいつらしくさせたからね。人を管理するのではなく、あいつがやりやすいように環境作りに徹したというわけさ」(167ページより)

この発言を受けて著者も主張しているように、偉大なプロデューサーの多くはほぼ存在感を消し、目に見えない脇役に徹しているものだ。なぜならその仕事は、アーティストが成功するための空間作りだからである。

そして、ここにも音楽とビジネスを同列に語ろうとする本書の意義が表れている。音楽の世界のみならず、あらゆる組織におけるリーダーと部下との関係にも同じことがあてはまるからだ。組織においては、「リーダー=プロデューサー」とは言い切れない部分もあるだろう。しかし上に立つ者の役割が「人を管理するのではなく、やりやすいように環境作りに徹する」ことであるのは疑いようのない事実。

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