音楽で成功した人=最高の仕事人である納得の訳 音楽に不可欠な要素はビジネスにそのまま通じる

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では、何が必要なのか?

それは、本書の各章のタイトルに表れている。

「実験」「コラボレーション」「デモテープ(試作品)」「プロデュース」「ファンとつながる」「リミックス」「感情、感性、感覚」「進化(アップデート)」。すべて、ジャンルに関わらず新たな音楽を生み出すために不可欠な要素だ。そしてそれらは、これからのビジネスにも必要とされるものだということである。

ハック・ショックリーの思想

たとえば、クリエーティブとビジネスとの間にある距離と、そこを埋める必要性を言い表したのは、プロデューサーであるハンク・ショックリーの次の言葉だ。

「連中はこういう決まり文句で利益の追求に走る。『前にこれがうまくいったから、今後もこれでいくぞ』。会議室で俺はこう言うんだ。『いや、それは違う。必要なのは、新しいデザインとリミックスだ』ってね」(234ページより)

ハンク・ショックリーは、1980年代のヒップホップ・シーンを語るうえで欠かすことのできないプロデューサーだ。ヒップホップ・グループ、パブリック・エナミーのサウンドを担当したボム・スクワッドというプロダクション・チームの中心人物で、革新的かつ攻撃的な音づくりによってシーンに衝撃を与えた。

老舗ヒップホップ・レーベルとして知られるデフ・ジャム・レコーディングスのリック・ルービンやラッセル・シモンズとも活動。LL・クール・J、ベル・ビヴ・デヴォー、EPMDのプロデュースを手がけるほか、ピーター・ガブリエルやシネイド・オコナーのリミックスを担当するなど活動範囲も広い。

彼のプロデュースについての考え方がよくわかるのは、スリック・リックという伝説的ラッパーに関するエピソードだ。

ハンクが在籍していたころのデフ・ジャムは、ストーリー仕立てのラップ表現が高く評価されていたブロンクスのラッパー、スリック・リックと契約する。だが彼は頑に自分の意見を通して物議を醸すことで知られる問題児でもあり、案の定デフ・ジャムとも揉めることに。リード・プロデューサーのルービンでさえ、どうすることもできなかった。

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