スポーツ「勝利至上」の人に伝えたい不都合な真実 「勝ちたい気持ち」が強いと成績の妨げになる
スコアボード上で勝敗を決定するとやる気を阻害する
スティーブ・プリフォンテインは、勝利の狭義の定義、すなわちスコアボード上の数字で勝敗を決定することは、パフォーマンスを測る方法として不完全であるとして認めていなかった。しかし、その狭義の定義は、不完全なだけでなく有害な考え方だ。それは、若いアスリートたちのやる気を阻害する大きな要因となるからだ。
もう少し詳しく説明しよう。「勝者はスコアボードで決まる」と定義する場合、次の3つの要素が関わってくる。「①結果」「②他者との比較」「③失敗の回避」である。
調子がよかったか悪かったかに関係なく、より多くの得点を獲得することが重要。この考え方だと、調子が悪くても、より多くの得点を獲得することさえできれば、それだけで勝者になれるということだ。人生最高とも言えるような絶好調でも、不運なことにボールがある方向に跳ねたり、疑義のある判定が下されたりしたとしても、スコア以外のことは関係ない。敗北者なのだ。
他者との比較は、個人的な優劣につながりやすい。私は彼女よりも優れているか? 彼らは私たちよりも優れているか? その判定を下すのは、やはりスコアボードとなる。もし、私のほうがより多く得点を獲得していれば、私のほうが優れている。自分の力が思うように発揮できたことや、自己ベストを出せたということだけでは不十分になってしまう。相手よりもよいスコアを獲得できていなければ、すべて意味がないのである。
スコアボードにしか興味がない監督は、失敗を嫌う。スコアボードの数値に悪影響を与えるからだ。相手よりもミスが少なければ、スコアボードを制することができる、と信じている。
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