スポーツ「勝利至上」の人に伝えたい不都合な真実

「勝ちたい気持ち」が強いと成績の妨げになる

結論を簡単に説明すると、勝つことではなく、熟達(マスター)することに集中するよう指導された選手のほうが、より多くのメダルを獲得し、スコアボード上よい成績を挙げていたことがわかったのである。

これは、「勝つのは大抵の場合、より勝つことを意識したチームや選手である」というスポーツの大神話に反する事実である。私は監督がこう言うのを幾度となく耳にしてきた。「あのチームが勝てたのは、勝ちたいという気持ちが相手よりも強かったからだ」と。

スコアボード上の数値に集中すると不安感が増幅

一見信じがたいことかもしれないが、ご自身のスポーツ経験を振り返って考えてみてほしい。何かが本当にほしかったとき、その強い気持ちが逆に妨げになってしまったという経験はないだろうか。研究の結果、選手がスコアボードの数値に集中すると、ある現象が起こるということがわかってきている。

それは、選手の不安感が増幅されるというものである。スコアボード上の勝利が何よりも大事だと考える選手は、「負けてしまうのではないか」という不安を感じ、貴重な気力を費やしてしまう。問題となるのは、不安になったり緊張したりすると、失敗しやすくなるということだ。失敗を恐れるようになると、ためらったり臆病になったりしてしまうのである。

不安感を抱き始めると自信をなくしてしまう。自信喪失は、パフォーマンスにも、スポーツを楽しいと感じるかどうかにも影響する。子どもたちがスポーツを楽しいと感じると、練習量も増えるし、生産性も向上する。

スコアボード上の成果を挙げたいと思うと、不安感が増してしまうのはなぜだろうか。それは、スコアボードの数値は自身のコントロールが及ぶものではないからである。人は、自分にとって大事なこと、かつ自分のコントロールが及ばないことを不安に感じるものだ。

スコアボード上の勝利は、選手やチームがコントロールできるものではなく、相手のレベルに大きく左右される。絶好調で過去最高のプレーが続いたとしても、スコアボード上は負けるということもありうるのである。

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