スポーツ「勝利至上」の人に伝えたい不都合な真実 「勝ちたい気持ち」が強いと成績の妨げになる

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「スコアボード上の勝利」だけを重視することの弊害について解説します(写真:m.Taira/PIXTA)
スポーツでは「勝つこと」を重視しがちですが、「優れたアスリートの多くは相手に勝つことよりも自分のパフォーマンスの改善を重視することがわかってきている」と言うのが、スタンフォード大学アスレチック・デパートメント(スポーツ部を統括する独立部署)に設置された非営利組織「ポジティブ・コーチング・アライアンス(PCA)」の創始者であるジム・トンプソン氏です。
子どもたちのスポーツ体験をより豊かにするために、コーチや保護者はどう指導すればよいのでしょうか。トンプソン氏が解説します。
※本稿はトンプソン氏の新著『ダブル・ゴール・コーチ』から一部抜粋・再構成したものです。

「勝者」の伝統的な定義

私たちの社会は、勝利に高い価値を置いているが、何をすれば勝者になれるのだろうか。また、人生の勝者になるような大人に育てるためには、子どもにどのようなユーススポーツ体験をさせてあげればいいのだろうか。

ここでは2種類の勝者に分けて考えてみる。「スコアボード上の勝者」と「熟達(マスタリー)の勝者」である。勝者の伝統的な定義は、「スコアボード上、最もよい結果を出した人またはチーム」である。試合で、あるチームがあらゆる面で相手チームに押されていたとしても、最終的にスコアボードにより高いスコアが表示されたら勝者になるのである。

映画『ラスト・リミッツ 栄光なきアスリート』は、オレゴン州のクーズ・ベイ出身で、オレゴン大学在学中に数々の全米記録を塗り替えた強靭な精神のランナー、スティーブ・プリフォンテイン(プリ)について描いたものだ。陸上部監督のビル・バワーマンは、狭義の意味で「勝者」を捉え、スコアボードによって勝ち負けが決まるという自身の考え方にプリが強く反発していたことを思い返し、葬式の場面でこう語った。

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