AOKI、2年目の「パジャマスーツ」で描く復活戦略 今秋冬の販売着数は大幅増の20万枚を目指す

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素材は布帛(織り物)ではなく、ニットを使った。編み物のニットは伸縮性があり、着心地がいい。10種の素材から、段ボール構造のニット素材と、ジャージ素材の2種類を採用した。いずれも通常のスーツでは使われない素材だ。一方でダーツ(つまみ)を入れて膨らみのあるデザインとし、スーツで使われる立体縫製を取り入れて、形状が崩れない工夫をした。

委託先はテーラードジャケットが縫え、カジュアル衣料の経験もある中国の工場から、日本人が現地に残る1社に絞った。コロナ禍で行き来ができないため、スピード開発には現地の日本人スタッフが不可欠だったためだ。

初回からいきなり3万着を生産

価格は上下のセットアップで約1万円と決めた。AOKIのスーツの多くは2万円以上だが、「コロナ禍で収入減に見舞われた方も多くいる。小遣いの範囲で買えるには、1万円が限界だと思った」(水谷副本部長)。

この価格が実現できたのは、取引先を1社に絞り、大ロットで発注したためだ。スーツ販売は半年で3000着程度が一般的だが、パジャマスーツは一度に3万着を発注した。さらに取引先の“協力”もあった。「ある意味、採算度外視。コロナという異常下で、うちも利益幅を減らしてやるから協力してくれと説得した」(同)。

もちろん、売れ残ればAOKIが在庫を抱えることになる。それでも勝負に出たのは、一足先に販売していたマスクでの経験も大きい。

AOKIで販売されるマスク。立体縫製の技術が活かされている(撮影:尾形文繁)

AOKIはマスク不足が叫ばれていた昨年5月、自社で企画したマスクを投入した。ネット発売当日には注文が殺到、サーバーが6分でダウンしたほどだった。マスクは現在も店頭に並んでおり、累計販売枚数は1200万枚に達する。

客が本当に必要なものを提供すれば、これほどの反響がある。この経験がパジャマスーツのスピード開発を後押しした。もともと「うちは少年サッカーチームみたいなところがある。一度目標を決めたら、社員みんながガーッと1つのボールを追おうとする」。水谷副本部長はそう言って笑う。

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