YouTuberへの誹謗中傷、法整備でもなお残る厄介 事務所が頭抱える、「対処しにくい」具体事例

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容姿や振る舞いへの中傷は、受け止め方や許容範囲がユーチューバーによってまちまちであり、「明らかな実害」を訴えにくいため、警察などの協力を仰ぎにくい。また、この類いの投稿はそもそもの数が膨大で、物理的に追い切れないという側面もある。

「気にしない」と割り切れるユーチューバーばかりなら問題ないかもしれないが、それによって心を病む人がいるのも実情だ。

もう一つ対処が難しいのが、同業であるユーチューバーによる誹謗中傷やデマ拡散だ。炎上している問題にコメントしたり、視聴者から得たタレコミを発信したりする「物申す系ユーチューバー」の投稿動画の中には、「事実無根のケースも少なからずある」(前出の事務所首脳)。

虚偽の内容を拡散するユーチューバーが数十万単位のフォロワーを抱えていることも、今や珍しくはない。標的になったユーチューバーはイメージダウンなどの被害を受ける。

前出の事務所では、所属していたユーチューバーが「未成年で飲酒・喫煙をした」といった事実無根の内容が配信されたことがあるという。「過去のSNS投稿や動画、昔の友人からの話など、上手に切り取ることで、証拠はないのにあたかも事実かのように配信された」(事務所首脳)。

加害者年齢の「低さ」が際立つ

こうしたデマがクライアントに伝わり、決まっていたタイアップ案件やイベントなどの仕事が飛ぶこともあるという。

事務所として抗議したり、訴訟を起こしたりもできるが、「相手は『抗議が来ました!』と、そのことをネタにまた動画を作るなど、火に油を注いでしまうこともある。被害を最小限にすることを優先すると、打ち手は限られてしまう」(事務所首脳)。

一般人から同業者まで、多種多様な誹謗中傷に対処する事務所側が実感するのは、加害者の年齢層の低さだという。UUUMの梅景氏は「加害者が(中高生など)未成年であるケースは多い。SNSについての教育や、使う際のガイドラインの整備も、より重要になるのでは」と話す。

2020年、女子プロレスラー・木村花さんの自死をきっかけに社会的な注目が高まった誹謗中傷問題。罰則が強化されても、攻撃された人が受けた傷が簡単に消えるわけではない。社会的関心が高まる中ではあるが、法整備や企業の努力だけでは解決できない課題も依然として多そうだ。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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