YouTuberへの誹謗中傷、法整備でもなお残る厄介 事務所が頭抱える、「対処しにくい」具体事例

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UUUMで誹謗中傷対策などを統括する梅景匡之COO(記者撮影)

「(誹謗中傷に対して)ユーチューバーが独断で動いてしまうと、相手を刺激して攻撃がエスカレートすることもある。会社として表に立って動くことの意味は大きい。また、証拠画像をそろえるなどの作業量は膨大で、数カ月単位の対応となる場合もあり、個人で行うには限界がある」

UUUMで誹謗中傷対策などを統括する梅景匡之COO(最高執行責任者)は、専門チーム運用の意義についてそう語る。

こうした対応は同業他社でも取り組まれている。大手事務所のグローブでは、「殺害予告など、ユーチューバーへ危険が及ぶ可能性のある場合、顧問弁護士への相談のもと、警察への被害相談、プラットフォームへの削除依頼などを行っている」という。

さらに厄介な「個人サイト」

一方で、対策にはさまざまな課題もある。ユーチューブやツイッターなどのSNSで誹謗中傷が投稿される場合、各社に対し削除を依頼することになる。ただ、依頼要件や対応範囲などは各社異なるため、時間や手間がかかるうえ、最終的に削除対応をしてもらえるかは不確定だ。

「SNSは情報の拡散するスピードが早いため、削除依頼のための証拠を集めている間にも(誹謗中傷を含む内容が)どんどん出回ってしまうことがある」(UUUMの梅景氏)

さらに厄介なのは、個人などが運営するサイトに書き込まれた誹謗中傷だ。大手SNSならば一定のガイドラインが示されており、削除依頼もそれに沿って行うことができる。が、個人サイトは「問い合わせても返事がないといったことがザラで、対応が非常に難しい」(梅景氏)。

こうした個人サイトのリンクがSNSなどで拡散されると、誹謗中傷の大本を断てず苦労するケースがあるようだ。

対応の難しさは、投稿の内容によっても異なる。殺害予告や個人情報の暴露など、被害に直結しうるものは断固とした対応に打って出やすい。一方で冒頭のコメントのように、本人の容姿や振る舞いを中傷する言葉は「まったく対応できないケースが大半だ」(大手ユーチューバー事務所首脳)。

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