ABC問題で支持率低下したバイデン大統領の今後 支持率低下は一時的か、中間選挙まで響くのか

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バイデン大統領の発言からは、秋にはコロナ前の普通の生活に戻っているとも想定されていたため、いまだに終わりが見えないパンデミックに不満を抱いている国民も多くいる。もちろん、感染拡大はバイデン大統領だけの責任ではない。昨今、共和党支持者を中心にワクチン接種を拒む国民が多くいる。二極化社会でワクチンが政治問題と化したこともパンデミック収束を遅らせている。

9月半ば、食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は高齢者などを除き16歳以上の国民が3回目のワクチンを接種することに反対した。9月20日には追加接種が可能になると公約していた政権にとって想定外の展開となり、政権のコロナ対策の信憑性を疑う声も広まった。

2020年大統領選では、コロナ対策でトランプ前大統領が正しい情報を流さなかったことなどで国民の信頼を失い、政権運営能力が疑われたことが、トランプ前大統領の落選につながったとみられている。バイデン大統領もその二の舞となりかねない。

中間選挙は大統領の信任投票

ABC問題はいずれもバイデン大統領が作り出した問題ではないが、ホワイトハウスそして議会のすべてを民主党が握っているため、選挙で責任を取らされるのはバイデン氏だ。

アウトサイダーとしてワシントン政治の伝統に従わず同盟国にも強硬姿勢を示したトランプ前政権に対し、バイデン大統領は政治と外交の正常化で問題を解決することを国民に約束してきた。オバマ政権時代の経験豊富な政府高官を多く揃え、プロによって対処していくともみられていた。その結果、国民のバイデン政権に対する期待値は高まっていた。それだけに、ABC問題を通じ、バイデン氏への信頼は失墜してしまったかもしれない。

カリフォルニア大学サンタバーバラ校の分析によると戦後の中間選挙では、大統領の政党は平均して上院で4議席、下院で26議席を失っている。共和党は上院でわずか1議席、下院で6議席(空席がないことが前提)増やせば多数派に返り咲くことが可能なため、歴史が繰り返されれば2022年中間選挙で民主党は多数派の座を上下両院の片方あるいは両方で奪われる可能性が高い。

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