ABC問題で支持率低下したバイデン大統領の今後 支持率低下は一時的か、中間選挙まで響くのか

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中間選挙は実質、現職大統領の信任投票であり、最も重要な要素は大統領の支持率だ。仮にバイデン大統領の支持率が現状のまま低迷して推移していた場合、中間選挙で民主党議員は大統領から距離を置こうとするであろう。

バイデン大統領の支持率が現状を底に今後回復するのか、あるいは支持率の低下は始まりにすぎないのかは、まだ、わからない。残り1年強で新たな問題が浮上し、それが中間選挙の最大の争点となる可能性も大いにある。

中間選挙までに支持率を回復するには

アメリカに対する想定外の攻撃(Attack)などがあり、危機対応で国民が大統領の下で団結し、政権への支持が一気に回復することもありうる。ジョージ・W・ブッシュ大統領は9.11テロ事件への対応で当初の支持が急騰したことで、翌年の中間選挙では上下両院で議席を増やした。昨今では国外のテロリストだけでなく、白人至上主義者などによる国内テロのリスクも高まっている。

また、インフラ投資法成立で経済政策「より良い復興(Build Back Better)」が経済回復をもたらすことに国民の評価が高まることも想定される。

コロナ(Coronavirus)の早期収束に成功したり、共和党でトランプ派候補(Candidate)が台頭したりすることも民主党候補の勝利に追い風となる可能性もある。9月にカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)の解職(リコール)を問う選挙では、「われわれはトランピズムをまだ倒していない」と主張して、トランプ派の候補が知事となった場合のリスクを訴え、リコールは不成立となった。民主党支持者が多いカリフォルニア州と他の多くの選挙区で事情は異なるが、同様の戦略が功を奏するかもしれない。

中間選挙までまだ多くの時間が残されているので、前述のとおりバイデン大統領には支持挽回の余地もある。だが、政権発足1年目の大統領に対する国民の第一印象は後々まで残る傾向がある。政権運営能力が問われ始めたことは、2022年中間選挙だけでなく、2024年大統領選まで尾を引くかもしれない。

渡辺 亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長

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わたなべ りょうじ / Ryoji Watanabe

慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。研究・専門分野はアメリカおよび中南米諸国の政治経済情勢、通商政策など。産業動向も調査。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。

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