ドイツの連立協議難航とEU「メルケル後」の不安 EU主導したいマクロン仏大統領も支持率低迷
SPDが率いる信号連立、CDUが率いるジャマイカ連立、いずれの場合も、長らくドイツ政界を率いてきた2大政党を核とした連立政権が発足することになる。政策相違のある3政党による連立となることで、連立協議をまとめるのは難しくなるが、代わりに極端な政策主張が薄まる。いずれの連立も現政権と比べて気候変動対策を強化するとみられるが、同時に企業競争力にも配慮することになりそうだ。
また、現政権と比べてやや拡張的な財政運営となりそうだが、財政黒字化を義務づける「債務ブレーキ」の改正には踏み込まない。したがって、極端な政策転換は予想されず、政策の継続性が保たれよう。
親中路線は修正、日本とは利害の一致も
メルケル時代のドイツは中国との経済関係を強化したが、近年ではドイツも親中一辺倒の姿勢を軌道修正している。次期政権には人権を重視する緑の党やFDPが加わるとみられ、対中外交は経済関係重視と外交・安全保障での警戒姿勢をバランスさせることが予想される。対中関係では日本とドイツの利害が一致する場面も増えそうだ。
前回2017年の選挙後に連立協議が難航した際は、前述のように、ドイツの株価が軟調に推移した。今回も連立協議の長期化で政治安定が脅かされるとの不安が広がる可能性もあるが、世界の金融市場を揺るがす事態に発展するのは避けられよう。日本では現在、政局期待から株価が上昇しやすい地合いにある。ドイツの政局不安が広がれば、逆に海外投資家の目が日本に向き、日本の株式相場には追い風となる可能性があろう。
27カ国の寄り合い所帯である欧州連合(EU)を、これまで束ねてきたのは、ドイツとフランスの2大国によるリーダーシップだ。メルケル首相なき後の独仏関係は、ショルツ氏とラシェット氏のどちらが次期首相に就任するとしても、フランスのマクロン大統領と良好な関係を構築できるだろう。
ショルツ氏は現政権の財務相として、ドイツ伝統の規律重視姿勢を軌道修正し、コロナ危機対応でEUとして一体的な財政対応や欧州復興基金の部分的な債務共有化をまとめることに尽力した。これはフランスが掲げるEUの統合強化の方向性と一致する。ラシェット氏は流暢なフランス語を操り、これまで独仏の文化交流を推進してきた人物だ。両者共に選挙戦の最中にマクロン大統領と面会した。
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