9.11から20年「対テロ戦失敗」招いた米国の勘違い アフガンからの撤退を余儀なくされたワケ
雄牛の銅像に張り出されたビン・ラディンの写真
ニューヨークのウォールストリート界隈を歩けば、巨大な雄牛の銅像「チャージング・ブル」に遭遇するはずだ。株式市場の盛況を象徴するこのモニュメントは、今では当地の観光スポットともなっている。大きく腰を引いて攻撃に身構えるこの巨大な牛の突き出た尻に、オサマ・ビン・ラディンの顔写真が「WANTED」の文字と共に張り出されていたのは、今から20年前のアメリカ同時多発テロ事件から間もなくのことだった。
民間航空機が2機突っ込み、マンハッタンを象徴する存在だったワールドトレードセンターのツインタワーが倒壊した現場は、ここから歩いてすぐの場所にある。事件直後から現場周辺には規制線が張られて立ち入り禁止となり、かろうじて通りの向こうに倒壊した建物の側壁や瓦礫が見えて、そこから絶えず煙が上がっていた。
誰がそうしたのか、テロの首謀者だったビン・ラディンの手配書が張り出されたころには1週間が経過していたが、それでも近隣の街並みには、倒壊した建物から舞い上がってやってきた粉塵が、停めっぱなしの自動車や放置されたままの商店の店先に積もったままだった。
街角には立ち尽くしたままじっと倒壊した現場を見つめて静かに涙を流す女性もいれば、粉塵にはアスベストが含まれていると呼びかけてマスクを配るボランティアの姿もあった。いずれにしても、現場周辺には混乱が続いていた。
アメリカはこのあと、ビン・ラディンをかくまったとして、イスラム主義組織タリバンが統治していたアフガニスタンを攻撃。新政権を樹立させたまではよかったが、そのまま駐留していたアメリカ軍が事件から20年を経て一斉に撤退。再びタリバンが政権を掌握したことは、先月末から大きく報じられている。言ってみれば、20年をかけて元の木阿弥だ。
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