9.11から20年「対テロ戦失敗」招いた米国の勘違い アフガンからの撤退を余儀なくされたワケ

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世界の食肉産業界をリードするアメリカは、業界を挙げて食肉輸出の戦略を練る。官民が共同出資でアメリカ食肉輸出連合会(USMEF)という組織を立ち上げ世界各地に支所を置き、世界のマーケット状況の調査報告から分析までを行う。その年次総会でのことだった。

日本が米中両国に依存する食料問題の現場取材でアメリカの高官は、中国のWTOの加盟を念頭に語った。

「中国がWTOに加盟したときには、中国は世界の既存のルールに従う国だった。そのルールの傘下に入ってきて、世界のルールを守ってもいた。それが、ここ最近は世界のルールを変えて、食の安全基準すら変えていこうとしている」

アメリカの関与政策の目論見が浸透していたことは明らかだった。それがどうやら違ってきていることをワシントンは危惧していた。

その具体例として挙げたのが、豚肉の添加物として使用される塩酸ラクトパミンの国際基準についてだった。

ルールに「黙って従う国」から「作りかえる国」に

アメリカの食肉と言えば、日米貿易摩擦でもつねに議題にあがる牛肉を思い浮かべやすいが、実はアメリカは1990年代に豚肉を輸出産業として急成長させ、今では世界一の豚肉輸出国となっている。

日本の豚肉自給率は50%以下で推移しているが、そのうちアメリカからの輸入が最も多い。その豚肉の加工にアメリカでは塩酸ラクトパミンを用いる。豚を出荷する90日から45日前に赤身肉を増加させる目的で、塩酸ラクトパミンを餌に混ぜて与える。いわばドーピング効果だ。

日本では使用禁止だが、これが使われたアメリカ産の豚肉は今でも当たり前のように日本国内で流通している。

この使用にあたって世界の安全基準を2012年に設定した。国際的政府機関のコーデックス委員会でのことだ。欧州連合(EU)は、とにかく塩酸ラクトパミンの使用も使用肉の輸入についても、人体への安全上の疑問から反対の立場を貫いていた。アメリカの強い主張もあって、最終的に1日の摂取許容量が参加国の多数決によって裁可されると、欧州は使用も使用された食肉の流入も認めないという声明を出して、徹底排除の構えを貫いた。

それだけでもアメリカにとっては厄介なのだが、そこに欧州と同じ立場をとって歩調を合わせたのが中国だった。アメリカの牛肉消費量は世界の半分を占めるが、豚肉の消費量で世界の半分を占めるのが中国である。

中国では「肉」といえば豚肉を指すのが常識で、世界最大の豚肉市場でもあった。そこが食品の安全基準をめぐって、反対の立場を明確に主張してきたことが、アメリカにとって驚きだったのだ。

それまでの中国は、食の安全には無頓着どころか、“毒食”を撒き散らしているとも言われ、日本でも中国産冷凍ホウレンソウから基準を超えた残留農薬が検出されたり、輸入うなぎから発がん性物質が見つかったり、2008年には殺虫剤が混入した中国製冷凍ギョーザ事件などが大きな問題となった。

塩酸ラクトパミンに限っても、1990年代に偽薬が中国国内に出回り、各地で中毒事件を引き起こすことが問題になっていたほどだ。それだけに、中国の対応が信じがたい。

「これまでは決められたルールに黙って従う国が、これからはWTOのルールまで作りかえてしまう」

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