ドイツの連立協議難航とEU「メルケル後」の不安 EU主導したいマクロン仏大統領も支持率低迷
ポスト・メルケルを占うドイツの連邦議会選挙が9月26日に行われた。現政権を主導する中道右派のキリスト教民主同盟と姉妹政党で同一会派を組むキリスト教社会同盟(以下、両党を合わせた統一会派をCDUとする)は、連立パートナーで中道左派の社会民主党(SPD)に僅差で破れた。SPDが2002年以来となる第一党の座を獲得した。
欧州では近年、気候変動への関心が高まっており、ドイツでも選挙戦の最中の7月に大規模な洪水被害が発生した。気候変動対策が選挙戦の争点の1つだったが、第一党の座を競ったSPDとCDUの2大政党と、3番手につけた環境政党・緑の党は、程度の差こそあれ、いずれも気候変動対策の強化を掲げており、政策論争は盛り上がりに欠けた。
メルケル引退後の首相選びのはずが
16年の長きにわたってドイツを率いてきたメルケル首相は、今回の選挙を最後に政界引退の意向を表明している。ドイツの戦後政治史上初めて現職首相が出馬しなかった今回の選挙戦は、政策論争よりも首相選びの色彩を帯びた。ポスト・メルケルにふさわしいのは誰か、各党が掲げる後継首相候補への評価が勝敗を分けた。
一時は世論調査でリードした緑の党は、首相候補のベアボック氏の経歴の誤記載や著作の盗用疑惑が浮上し、後継首相レースから早々に脱落した。メルケル首相が所属するCDUの首相候補のラシェット氏は、洪水被災地における似つかわしくない談笑姿が報じられ、終盤で大きく失速した。
こうしたなか、堅実な政策手腕に定評のある社会民主党の首相候補ショルツ氏が、現政権の副首相としてメルケル路線を踏襲する人物であると印象づけることに成功し、同党を勝利に導いた。
16年に及んだメルケル施政は国内外で高く評価されてきた一方で、ドイツ国民の間には変化を求める声も広がっていた。ただ、高齢者を中心に緑の党に政権を任せるのに躊躇する有権者が、政策継続の安定感と“ほどほどの“変化を託せる次期首相として選んだのがSPDのショルツ氏だった。
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