ドイツの連立協議難航とEU「メルケル後」の不安 EU主導したいマクロン仏大統領も支持率低迷
とは言え、第一党となったSPDと史上最低の得票率で第二党に終わったCDUとの差は僅かだ。ドイツでは第一党が政権を率い、首相を出すというルールはなく、過去には第二党が他党との連立協議をまとめ、政権を発足させたことが何度かある。僅差の選挙結果ということもあり、第二党に沈んだCDUは、政権発足に向けた連立協議に意欲を見せている。次期政権とポスト・メルケルの行方は、今後の連立協議に委ねられる。
連立の組み合わせとして考えられるのは大きく2つある。
1つは、第一党となったSPDが主導し、緑の党と中道リベラル政党の自由民主党(FDP)が加わる政権だ。3党のイメージカラーが、赤・緑・黄色と、信号と同じ配色のため、「信号連立」と呼ばれている。もう1つは、第二党となったCDUが主導し、緑の党、FDPが加わる政権で、3党のイメージカラーが黒・緑・黄色とジャマイカの国旗と同じ配色のため、「ジャマイカ連立」と呼ばれている。
この他に、SPDと緑の党に、旧東ドイツの支配政党の流れを汲む左翼党(Linke)を加えた左派3党による連立の可能性も事前に指摘されていたが、こちらは左翼党が議席獲得に必要な5%の得票率に届かない模様で、選択肢から排除される。
連立協議は難航が予想される
ドイツでは1950年代以降、2つの政党が連立を組み、政権運営を行ってきた。今回は50年以上振りに3党による連立協議をまとめなければならない。しかも、信号連立・ジャマイカ連立ともに、財政運営や気候変動対策をめぐって政策軸が大きく異なる政党間の連立協議が必要となる。連立協議は難航が予想される。
前回2017年の選挙後の連立協議は途中で暗礁に乗り上げ、政権発足まで半年近くも要した。その過程では連立協議がまとまらず、議会の過半数の議席を持たない非多数派政権発足や再選挙の可能性も取り沙汰された。ドイツでは議会の機能不全がナチス台頭を招いた反省から、政治安定を重視してきた。そのため、このときは政治空白の長期化や前例のない非多数派政権や再選挙の観測に、金融市場に動揺が広がった。
前回選挙後の連立協議を途中で打ち切ったのは、今回も連立の鍵を握るFDPだ。ただ、FDPは連立協議を打ち切ったことで有権者から非難され、その後長く支持低迷にあえいできた。今回も同じことを繰り返せば有権者の反発を買うことは必至で、政策相違を乗り越え、年内には連立協議がまとまることに期待している。現にFDPの関係者からは、選挙後に政権入りの意向を伝える発言が聞かれる。
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