ステランティスが「中国戦略」を見直す背景事情 「ジープ」の凋落に歯止めかからず、工場を集約

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ステランティスは中国市場でのジープ・ブランドの販売不振を止められず、現地工場の集約に追い込まれた(写真は広汽フィアット・クライスラーのウェブサイトより)

欧州自動車大手のステランティスは9月8日、中国国有自動車大手の広州汽車集団との合弁会社である「広汽フィアット・クライスラー」の生産効率改善や経営コスト低減を図るため、生産拠点を湖南省にある長沙工場に集約すると発表した。これは、もう1カ所の生産拠点である広東省の広州工場の操業を停止することを意味する。

広汽フィアット・クライスラーはもともと、広州汽車集団と欧米のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の折半出資で2010年に設立された。その後、FCAは2021年1月にフランスのグループPSAと経営統合し、ステランティスが発足した。

合弁会社では、旧クライスラーの流れを汲む「ジープ」ブランドのSUVを中国で現地生産・販売している。広汽フィアット・クライスラーの公式ウェブサイトによれば、長沙工場と広州工場はそれぞれ年間16万4000台の生産能力を持つ。

ジープの複数のモデルを(関税がかかる輸入販売から)現地生産に切り替えたことに加え、中国の自動車市場にSUVブームが到来したことで、広汽フィアット・クライスラーの事業は当初は順調に拡大。2017年には販売台数が22万2300台のピークに達した。

2020年の工場稼働率はわずか12%

ところが翌2018年、中国政府の小型車減税廃止などの影響により、中国の新車販売台数は28年ぶりのマイナス成長に陥った。その結果、メーカー間の優勝劣敗が顕著になり、外資系合弁会社の一部は販売が急減。広汽フィアット・クライスラーもそのうちの1社で、2018年の販売台数は12万5000台に減少し、2019年はさらに7万3900台に落ち込んだ。

本記事は「財新」の提供記事です

広州汽車集団の決算報告書によれば、2020年の広汽フィアット・クライスラーの生産台数は3万8600台、工場の稼働率はわずか11.77%だった。2021年に入ってからも凋落に歯止めがかからず、1~7月の生産台数は前年同期比57.78%減の7879台だった。

ステランティスは工場集約の発表と同時に、(現地生産車のみを販売する)広汽フィアット・クライスラーの事業とジープの輸入販売事業を統合することも明らかにした。なお一部の報道によれば、ステランティスは合弁会社の株式の20%を広州汽車集団から買い取る交渉を進めている。しかしこの点について、ステランティスは今回の発表では言及しなかった。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は9月9日

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