《プロに聞く!人事労務Q&A》年俸制の場合、割増賃金を支払わなくてもいいですか?
またIT企業に多く見受けられる、「専門業務型裁量労働制(労働基準法第38条の3)」が適用される社員の場合は、労使協定により定めた時間が労働時間として見なされる「みなし労働時間制」であり、そのみなし労働時間に対する年俸額としてとらえれば、管理監督者と同様に年俸制を採用することは効果的です。
この場合でも、労使協定で定めた「みなし労働時間」が法定労働時間以内であれば割増賃金を支払う必要はありませんが、法定時間外労働に該当する部分がある場合は、法定時間外相当分を含めた年俸額を設定しなければならず、年俸額に法定内部分および法定時間外部分を明確化しておくべきです。
そもそも年俸制は、成果主義賃金の代名詞として浸透している感がありますが、前述のとおり、年俸制を採用しているからといって、労働時間を管理しなくていいというものではなく、このような管理監督者やみなし労働時間制(裁量労働もしくは事業場外労働)対象者には効果的であるものの、それ以外の一般的な労働者に対して望ましい制度であるとはいえません。
なぜなら、年俸制による基本賃金には、あらかじめ賞与相当分を含んで年俸額としているケースが多く、年俸制対象者の割増賃金の単価は、その賞与相当分を計算の基礎として算入しなければならないといった理由などあるからです(通常、賞与は割増賃金の計算の基礎に算入しなくてもよく、年俸制の賞与相当分は、確定的な賃金としてとらえられてしまうため)。
東京都社会保険労務士会所属。1990年日本大学文理学部卒業。社会保険労務士事務所勤務を経て、2000年4月に社会保険労務士朝比奈事務所を開設。 主な業務分野は、賃金・評価制度等人事諸制度の構築、就業規則作成、社会保険事務アウトソーシング等。著書に「図解 労働・社会保険の書式・手続完全マニュアル」(共著)。
(東洋経済HRオンライン編集部)
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