地方の人口流出に仕事「以外」の隠れた本質理由 人口流出、都市部からUターン減にファクターX

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さらに地域の寛容性を掘り下げるために、地域の気質を測る「凝集性」と「開放性」についても調査をしている。

凝集性:「人間関係が濃密でつながりが強い」「歴史や伝統が大切に守られている」など
開放性:「よそから移り住んでくる人をあたたかく迎え入れる雰囲気がある」「学問や教養を高めることに熱心な雰囲気がある」など

その結果、次のことがわかった。

・寛容性の高い地域ほど凝集性が低く、寛容性が低い地域ほど凝集性が高い
・開放性項目は、寛容性上位の地域群だけが突出する
          ↓
結論:凝集性が高く、寛容性が低い地域ほど、地域の人口が減少する

では、寛容性を上げる方法はあるのだろうか?

このレポートでは、寛容性と相関が強い生活領域も調べている。仕事や余暇の満足度もさることながら、人間関係や文化水準の満足度のほうが、寛容性との相関関係が強いという。特に文化水準の満足度(音楽・演劇・美術など芸術文化に触れる機会が多いなど)の影響が大きく、寛容性を高める要因になりうるという。

文化的水準の満足度となると、大都市ほど多くの経験を提供できるように思うが、大都市に交じって沖縄県と石川県が同率7位に食い込むなど、地域に応じた文化的な経験の提供というのもあるようだ。

女性が暮らしやすい街でなければ人口は増えない

ここまで、LIFULL HOMEʼS 総研のレポートを抜粋して説明してきたが、ここからは少し個人的な感想も述べたいと思う。

筆者は東京で生まれて東京で育っているので、Uターン先がないこともあるが、冒頭のUターンしない理由の調査結果で最多だった「東京圏での生活が気に入っている」ので、出ることを考えたことはない。物価は高いし、電車も街も人で混雑しているし、何がいいのかと聞かれると答えに困る。

島原氏の説明を聞いて、東京圏での生活が気に入っていることと、人間関係が閉鎖的でないことは表裏一体の関係なのだと気づいた。加えて、仕事もあるし、好きな歌舞伎や落語を見たり、美術館に行ったり、おいしいものを食べたりと楽しく暮らせる点が気に入っているので、文化的な水準が高く、多様な価値観を受け入れる土壌があることも大いに影響していると納得した。

さて、東京一極集中や地方活性化などの問題が指摘されているが、「雇用の創出」や子育て層を呼び込むための「子育て家庭支援」、時代に合った「街づくり」などが重要であると言われてきた。

一方、コロナ禍でテレワークが普及したことで、二地域居住や移住などが促進されると期待されている。ただし、興味があることと実際に住むことには開きがあるだろう。仕事を都市部から持ち込むことができても、地域のコミュニティに溶け込み、豊かな自然と共生していくことにはさまざまな課題もある。

今回のレポートで浮き彫りになった「地域の寛容性」は、特に女性に強く影響すると見られる。若い女性が転入しなければ人口も増加しないので、女性が暮らしやすいと思える地域になっているかどうかが、今後の大きなカギになることは間違いないだろう。

山本 久美子 住宅ジャーナリスト

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やまもと くみこ / Kumiko Yamamoto

早稲田大学卒業。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナーなどの講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「All About(最新住宅キーワードガイド)」などのサイトで連載記事を執筆。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーの資格を有す。

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