タリバンが直面するリアルな「経済危機」のヤバさ 物価は急騰し、頼みの地下金融も混乱
「紛争があり、戦争があった。そして、さらに別の苦難が訪れている」とアフガン中央銀行のシャー・メーラビ理事は言う。「金融危機によって多くの家庭が一段と困窮することになるだろう」。
銀行のような正規の金融機関ができるはるか以前から、アフガンではハワラのシステムが確立していた。正規の銀行を利用できない多数の国民に加え、世界中にいる出稼ぎ労働者がハワラを通じて現金をやりとりしてきた。
ハワラは、別々の場所で同額の資金を動かす前提で機能するシステムだ。仲介人の台帳には債務や送金額が記帳されるが、仲介人の間で実際に現金を移動させる必要はない。脱税や贈賄、マネーロンダリングにはうってつけのシステムといえる。
地下資金はタリバン経済の命綱
実際、ハワラは20年前のタリバン政権には欠かせないシステムだった。2001年にアメリカが侵攻するまで、違法資金は同国経済の潤滑油になっていた。ハワラに加え、アフガンの広大なケシ畑で作られるアヘンなどの密輸によって世界中から資金が流れ込み、これが貿易赤字を穴埋めしていた。
アメリカの侵攻後、反政府組織となったタリバンは、テレビや燃料などの密輸品に課税することで資金を得るようになったが、その取引にもしばしばハワラや麻薬資金が使われた。
しかし、今のアフガンは様変わりしている。過去10年の経済成長は不安定だったが、経済規模は2000年代初頭の5倍になった。かつては乏しかった電力も普及し、スマートフォンやインターネットも普通に使われるようになっている。