タリバンが直面するリアルな「経済危機」のヤバさ

物価は急騰し、頼みの地下金融も混乱

銀行の前で長蛇の列を作るアフガニスタンの人々(写真:Jim Huylebroek/The New York Times)

卵や小麦粉の価格が高騰し、人々が銀行の前で長蛇の列をつくっているアフガニスタンでは、地下金融を用いた両替商に対する需要が急激に高まっている。エナーヤトゥッラーさんは、そうした両替サービスを手がけている1人だ。

「名字は明かしたくない」と言うエナーヤトゥッラーさんは、世界に広がる非公式の資金移転ネットワーク「ハワラ」の小さな一角を成している。タリバンもハワラ経由で資金を調達し、反乱を成功させた。アフガンでは多くの世帯がハワラを利用して、イスタンブール、ロンドン、ドーハなどに住む親族から送金を受けている。ハワラ経由で現金が入らなくなれば、アフガン経済は完全に行き詰まるということだ。

国際援助が消えれば、GDPの半分が吹き飛ぶ

その可能性は今、極めてリアルに存在する。国外からの支援は枯渇し、物価は急騰。現地通貨の価値は暴落し、アフガンが持つ94億ドルの準備金も凍結されて引き出せない。

「需要が大きすぎて」ハワラだけではカバーしきれないとエナーヤトゥッラーさんは言う。現金を引き出そうとする人が急増したため、取引1回当たりの手数料を4%と、通常の約8倍に引き上げざるをえなくなったそうだ。資金不足が深刻化する中、手元の資金を流出させないよう、タリバンだけでなく、両替商も自ら活動の引き締めに動いている。

タリバンはアフガンの戦争に勝利したが、経済危機がその戦利品となるのかもしれない。外国からの資金援助はアフガンの国内総生産(GDP)の半分近くに相当するにもかかわらず、同国は国際的な金融システムから切り離され、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、アメリカ政府などからの支援も止められた。

別の資金源を確保できなければ、数千万人という国民が過去20年間にわたって少しずつ蓄えてきた財産が吹き飛びかねない。すでに干ばつのせいで、飢餓が現実の脅威になっている。

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