タリバンが直面するリアルな「経済危機」のヤバさ 物価は急騰し、頼みの地下金融も混乱
こうした変容に一役買ったのが、外国からの資金だった。アメリカ政府によると、アメリカがアフガンの復興活動に投じた資金は過去20年で1450億ドルを超える。多くはアフガン治安部隊の構築に使われたとはいえ、資金は大規模なインフラ計画や経済支援基金にも振り向けられた。アフガン政府の年間歳出110億ドルの75%以上は、外国からの寄付によって賄われていたのだ。
国家財政の穴埋めにタリバンが四苦八苦するのは間違いない。
ハワラはアフガン人の生活で要となる役割を担っているが、それだけで完結できるシステムではない。取引の多くは仲介人の台帳上にしか存在しないといっても、最終的には「ハワラダー」と呼ばれる仲介人が持つ現金が担保となるためだ。
専門家によると、アフガンのハワラダーは日常的に現地通貨アフガニを使って中央銀行からアメリカドルを購入しており、こうした取引がアフガニ相場の安定につながっていた面もあるという。
現金枯渇へのカウントダウン
ところが、中央銀行が国外に置いた準備金にアクセスできない状態となったことから、アフガンの経済生活は大混乱に陥った。中央銀行のデータによれば、小麦粉価格の上昇幅は10%を超え、砂糖と卵の値段は20%ほど上昇したと、前出のメーラビ氏は話す。
全土を掌握したタリバンと、そのタリバンが任命した新たな中央銀行総裁代行は、12の国営および民間銀行に営業再開を命じる通達を出した。その後、銀行の前には預金を引き出そうとする人々が長蛇の列を作るようなり、1人当たりの引き出し額も制限された。
パシュタニー銀行が営業を再開した日には、すでに預金者が入り口の前で列を成していた、と同銀行の頭取で現在はイスタンブールに滞在中のアフマド・ジャヴェド・ワファ氏は話す。中央銀行に預けてある現金が届けられる限りパシュタニー銀行は顧客の日常的な需要には対応できるというが、中央銀行にある現金はいずれ底をつく。
「非公式経済が、タリバンが生き残るための唯一の資金源だ」とワファ氏は言った。
(執筆:Alexandra Stevenson記者)
(C)2021 The New York Times News Services
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