カネを使える人は使う。それに後ろ指をささない--『ウェットな資本主義』を書いた鎌田實氏(諏訪中央病院名誉院長)に聞く
『がんばらない』をはじめ、タイトルに「ない」がつく著書でベストセラーを連発している著者が、経済を正面に見据えた本を出版した。日本経済再生のキーワードは「波」「回転」と「フロンティア」だという。
--初めての著作は『がんばらない』でした。
10年前に書いた。毎年2回ぐらい増刷があり、いまも売れている。それ以降、書く喜びにひたっている。
--なぜロングセラーに。
時代が必要としているのではないか。「がんばる」を国是のようにして、資源のない小国が経済大国になった。がんばることは基本的には大事だが、同時に組織や国が強くなるためには、同じ方向で一枚岩にならないことも必要。時代が変わったとき、それがピンチを救ってくれる。こういう天邪鬼的な発想が注目されたのかな、と思っている。
--近刊では『空気は読まない』。
その前の2008年に『いいかげんがいい』が出ている。確かに「いいかげん」は嫌われがちなことば。あの本が出たころ、サブプライムローンで世界の経済は深く傷ついた。かげんを失って欲望が暴走したからだ。「いいかげんでなんで悪い」と、世の中に訴えた。そして『よくばらない』を書いた。
『空気は読まない』は、この国は空気に負けているのではないかと。日本はサブプライムローンで傷つき方が少なかったはずだが、欧米以上に回復していない。なぜか。経済は実体が半分、その残り半分は空気。空気に負ける日本をきちっと丸裸にしておかないと、いつまで経っても強い国になれない。
勝負時に空気を読まない、時には空気をかき回す、あるいは空気を換える人間が日本にはいなさすぎ。それでは、強い会社、強い組織、強い国にはならない。大事なときに空気を読まない勇気を持つ人間が、いま組織でも会社でも国でも必要とされている。