カネを使える人は使う。それに後ろ指をささない--『ウェットな資本主義』を書いた鎌田實氏(諏訪中央病院名誉院長)に聞く
--この本は「ない」が付かず、「ウエットな資本主義」がタイトルです。
若者たちを大事に考えてエッセーを書いてきた。若者たちの雇用を守れない国ってなんだと考えた
ら、資本主義のあり方に行き着いた。この国の資本主義が弱くなっているのでないかと。
経済の波が大きくなると、庶民は苦しむ。この波をどうやったら緩やかにできるのか。上半身で、競争を重視した筋骨隆々とした国をつくりながら、下半身の雇用、子育て、医療や福祉において誇りを持てるようにする。その両立が大事だ。
上半身の強化は、小泉政権が構造改革と新自由主義の手法を持ち込みながらやろうとした。あのときに競争を導入して上半身を強化したことは正しい。その一方で下半身をぐらつかせた。医者として、その政策では医療崩壊が起こると、週刊誌の連載で警告してきた。当時、その小泉流が「ドライな資本主義」といわれたので、その反対で「ウエットな資本主義」という造語をつくった。
--キーワードは、波と回転とフロンティアですか。
基本的に、資本主義で着目すべきはその三つではないか。
経済には悪いときが必ずある。そのときにじたばたしない。波だという発想でとらえる。いま苦しいが、この窮地はいずれ上向く、乗り越えられる。人生も波だし、会社も日本の経済も波がある。
同時に、資本主義はどうすれば回転できるかと考えていけばいい。みな資本主義の一員なのだから、おカネの流れを止めないように努める。1400兆円の個人金融資産がある国なのだから、大いに回転できるはずだ。資本主義の欠点は競争主義だから、ぎすぎすして冷たくなりがち。あたたかさも同時に回転させていくことが大事だ。
ここ200年、窮地に陥ったときに資本主義はどうやって解決してきたのか。それはフロンティア開拓。もう地球上にフロンティアがないように見えるが、創造力があれば、発見も開拓もできる。要するに創造力の勝負だ。