「倒れるまで無理をする人」が仕事を断れない理由 ストレスフルな現代に必要な「モンク思考」

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脳疲労が起きると、すぐに察知できますから、セルフコントロールできるようになりましたし、私自身も疲れにくくなったと感じています。

もちろん今でも、日々何十人もの患者さんを診療していると、自分自身が疲れてしまうということがあります。

これは医療従事者にとくに多いとされる現象ですが、共感疲労、同情疲労といって、コロナ禍で人を助けている仕事をしている人たちがバーンアウトしてしまうということが後を絶ちません。

けれど、自分を慈しむ心や自己肯定感が寛容されて育ってくると、自分が倒れてしまうまで無理することがなくなっていきます。

自己肯定感が十分に育まれていないと、頼まれた仕事を断ることで罪悪感にさいなまれるという心理が生まれ、自己犠牲に向かってしまうんですね。相手が頼んできているのに、です。

でも、自己肯定感が担保できるようになると、「今回は引き受けられませんが、またぜひお役に立ちたい」という前向きな気持ちでお断りできるようになり、罪悪感が心に根付くということはなくなるのです。

頭で理解することと、実践することの違い

ただこういったことは、心のあり方がマインドフルになってはじめて実感できることです。ですから本書は、前半を読み、まずはしばらく瞑想を続けてみてから、後半を読むとよいでしょう。すると、深く大切なことが書かれていることがよくわかるのです。

私はいつも、「すべからく行入を伴うべし」と申し上げています。

仏教の教えでは、実践から入る解釈を「行入」、理論から入る解釈を「理入」と言いますが、理入だけでは体得しきれず、行入と理入が伴って、はじめて正しい禅や仏教の智恵を習得できます。

これをおっしゃったのは、かの有名な達磨大師で、1500年も前に彼が重んじた、仏教修行の2本柱なのです。本を読むだけでは、理入でしかありません。きっとジェイさんが本当に言いたいことも、そこなのです。

頭でわかっていることと、本当に実践しているものとは、違います。けれど、情報ばかりがあふれる現代においては、多くの人が一度読んでわかったつもりになってしまいがちです。ほかならぬ私自身もその1人でしたし、ここをどう伝えるかがいちばんの課題でもあります。

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