「倒れるまで無理をする人」が仕事を断れない理由 ストレスフルな現代に必要な「モンク思考」

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今はとくにSNSなどで、自己愛が満足できない状態が起きています。自己愛は人との比較で生まれるもので、自尊感情とも言います。大原則として、人と比較を続けることで自分の価値を認識している限り、自尊感情への執着を手放すことはできません。

私が専門としているのはセルフ・コンパッション、つまり自慈心(自らに対する慈悲の心)と呼ばれるものですが、人との比較はしない、比較をすることはあっても、まずは主体的に自分を愛して大事にしてあげるというものです。

自己肯定感を置き去りにした「野心」

どんどんフォロワーが増えたり、YouTubeなどで多額の収入を得ている人が登場したりして、どんな人にもビッグチャンスが到来しているとも言える時代です。誰もが世界に向けて情報発信できることから、野心を抱きやすい状態にもなっています。

川野 泰周(かわの たいしゅう)/臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科・心療内科医。1980年横浜市生まれ。2005年慶應義塾大学医学部医学科卒業。慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。禅やマインドフルネスの実践による心理療法を積極的に導入している。また、2011年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行を経て、2014年末より横浜にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。現在は檀務とともに、坐禅会や社員研修、講演やメディア出演など、マインドフルネス普及活動にも取り組む。『精神科医がすすめる 疲れにくい生き方』『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』『ずぼら瞑想』ほか著書多数(写真:本人提供)

野心を抱くのはいいことでもありますが、ただ夢だけが膨らんで、日本人が苦手としている自己肯定感が捨て置かれているのが現状です。

自己肯定感を携えた人が、希望を抱くと、「いつかああなれたらいいな。でも、今日は今日できることをがんばろう」となるのですが、自己肯定感の低い中で希望だけを見せられると、そこにしがみついてしまうんですね。

そして、「自分もこれをやれば大金を稼げるかもしれない、世界に名をはせられるかもしれない」となってしまいます。

これは、ICT技術、情報技術が急速に発展しすぎたことによる、人間の精神に対する弊害だと思います。

作られた「自分らしさ」を生きている人が多いようにも感じます。「自分らしさ」とはブランディングであるかのように、世の中のいいところを一生懸命にまねをして、「こんな素敵な自分ができました」と見せようとする方が大勢います。

しかし、それを続けて「いいね」を欲していると、虚しくなってしまうのではないでしょうか。

心のあり方をマインドフルにして、人から見られる自分よりも、主体、主人公である自分が、本当に楽しい、生きがいを感じるというところにコミットしていくべきではないのかなと思います。

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