お互いにオタク系の趣味を持つことで気が合い、成婚へとつながった。
「成婚退会したのが2017年の夏でした。そこから、両家の挨拶や結婚の準備をして、翌年の2月に入籍をしました」
ひとりよがりがすれ違いを生んだ最初の結婚
女性と恋愛したのも、初めて。一つ屋根の下で女性と暮らしたのも、初めて。男女の関係になったのも、初めて。何もかもが初めてづくしだったが、それが新鮮で、智宏は結婚生活を楽しんでいた。
「恥ずかしながら、それはひとりよがりでした。彼女は、一緒に暮らした当初から、僕とはすれ違っていると感じていたんです。これは本当に反省しているんですが、言葉には出さなかったものの“俺がお前を食わせてやっている“というような驕りがあったんだと思います」
元妻は、フリーランスで小遣いにも満たない金額を得ていた。一家の経済は、智宏が担っていたのだ。
「“家にいるんだから、家のことはやって当然“みたいに考えていたんですよね。半年くらいして、『ちょっと実家に帰りたい』と、言われたんです。そのとき、彼女の中で、僕への不満がもう抱えきれなくなってた」
ただこのときは、 “慣れない結婚生活で、疲れが溜まったのだろう“と、呑気にとらえていた。
「1人になると夜暇じゃないですか。ネットで、“結婚生活をうまくいかせるにはどうしたらいいか “というようなサイトを検索して読んでいたんです。そうしたら、“妻が、理由もなく実家に帰るのは、夫婦仲に亀裂が入り出した兆候“みたいなことが書かれていて、“えっ、そうなの? これはマズイな“って」
そして、静まり返った部屋でひとり、この半年間を振り返ってみた。
「あれもこれも思い当たって。夕食に出た温野菜が、十分に茹でられていなくて硬くてマズかったから、無言で残したことがあったな、とか。家具が壊れて業者に修理に頼んだとき、『いついつに来るから、対応しておいてね』と彼女の都合も聞かずに、日程を決めてしまったことがあったな、とか。家にいるんだから、おいしい料理を作って当たり前、修理業者に対応して当たり前、と考えていた。自分本位だったことを反省しました」
ただそのときは1週間くらいで実家から戻ってきたので安堵し、智宏は言った。
「1人になって、これまでの結婚生活のことをいろいろ考え直してみたんだ。僕に思いやりが足りなかったよね。ごめんなさい」
すると、冷たい声が返ってきた。
「ようやく気づいたの?」
そこから智宏は、家事をなるべく手伝うようにした。休みの日は、キッチンに立って、料理を作ってみたりもした。ところが、離れた彼女の気持ちを取り戻すことはできなかった。
「日に日に笑わなくなったし、夫婦の会話も少なくなっていきました」
そこからか数カ月が経ち、彼女が「離婚をしたい」と言い出し、離婚前提の別居が始まった。彼女が家を出ていくときの最後の言葉が、これだった。
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