また、指揮命令系統も、中央から最前線の現場に向かって整然と確保されているようである。例えば、東京の多摩川に現れたゴジラに対して自衛隊がヘリコプター攻撃を行う場面では、「防衛省本省庁舎 中央指揮所」から「朝霞駐屯地 統合任務部隊司令部」、「木更津駐屯地 第4対戦車ヘリコプター隊本部」を経て、ゴジラに直接対峙しているヘリコプター「陸上自衛隊 観測回転翼航空機OH-1」の搭乗員に指示が送られている。
また、統合任務部隊司令部のシーンでは、東部方面総監部の幕僚長や防衛部長などの主要幕僚達が、統合部隊指揮官(東部方面総監)の意思決定を補佐する姿が描かれている。
このように、理想的には、文官から構成される巨災対も、インシデント・コマンド・システムやEOCをフル活用して、自衛隊のように整然とした事態対処行動を行うことが必要である。しかし、文官の危機管理組織と軍事組織の性質は必ずしも同じではない。文官の危機管理組織においてインシデント・コマンド・システムやEOCを構築するにあたっては、軍事組織との共通点や相違点を意識することが有用だろう。
異なる軍事組織と文官の危機管理
例えば、軍事組織では、平時から参謀組織が存在し、つねに危機に備えた訓練を繰り返している。一方、文官の危機管理組織は、危機が発生して初めて危機時の組織たるインシデント・コマンド・システムを立ち上げるのであって、平時にはインシデント・コマンド・システムは存在せず、平時の組織構造の中で関連業務に従事している。
したがって、軍事組織のほうが平時から多くの人員を必要とする一方、文官の危機管理組織は、危機時において平時の組織と危機時の組織の両方に重複して任用される結果、単純に職務内容が倍以上になり、危機時の事態対処行動に100%注力できない可能性や、すぐに疲弊してしまうおそれがある。
それを回避するには、インシデント・コマンド・システムの参謀に任命される文官に対しては、それと引き換えに平時の業務への任命を解除し、インシデント・コマンド・システムにおける事態対処行動に専従させることが重要である。
このように、軍事組織は、危機時の組織の運用に関して独立性が保たれている点が、文官の危機管理組織とは異なる特徴である。
一方で、EOCについては、平時から存在して稼働していなければならないという点で、文官の危機管理組織と軍事組織で共通している。危機が発生した際に迅速にEOCを通じた事態対処行動を起動できるよう、平時からEOCにスタッフを常駐して習熟させ、積極的にEOCを活用して平時の事態準備行動(プリペアドネス)を実施することが必須である。
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