父の借金を負わされた男性がやっと掴んだ「幸せ」 国立大学を中退し、キャバクラで働かされた

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預けられた祖父母の家では、同居していた伯父からささいなことで殴られたりしたので、安心できる家庭環境とはいいがたかった。別居していた父親は気がつくと、フィリピン出身の女性と再婚していた。

男性のクズっぷりを測る物差しとして「酒、煙草、女、ギャンブル」などという言い方をすることがあるが、「父は女の人にお金を貢いでしまう人だったみたいです」とアキラさん。真偽のほどはわからないが、祖母の話では、その女性の故郷には立派な豪邸が建っていると聞いた。

「親ガチャは外れでした」。アキラさんはまるでささいな失敗談でも打ち明けるかのようにあっけらかんと笑う。親ガチャとは、子どもは親を選べないという意味。ネット上のゲームで武器や通貨といったアイテムを抽選で購入する「ガチャ」という仕組みに由来する。

公立の小中一貫校に合格

親ガチャの引きは悪かったが、アキラさんは1つだけ母親に感謝していることがある。それは小学校受験をさせてくれたことだ。アキラさんは地元にある公立の小中一貫校に合格。おかげで教育環境には恵まれたという。教育熱心な家庭の子どもたちが集まる中でも、アキラさんの成績はつねにトップクラス。「小学生のころは図書館の本を片端から読むような子どもでした」。高校は公立の進学校に進んだ。

ただ父親は相変わらずだった。祖父母宅にもたびたびヤミ金業者からと思われる電話がかかってくる。恫喝してくる相手をアキラさんがあしらうこともあったという。

高校に入って早々に衝撃を受けたのは、携帯を買おうとショップを訪れたところ、滞納歴があるので契約はできないと告げられたことだ。父親が勝手にアキラさん名義で携帯を契約し、料金を支払っていなかったのだ。やむをえず継母の名義で、アキラさんと父親、継母の3台分を契約。1台でも滞納すると利用を止められるので、アキラさんは3台分の料金を稼ぐためにファストフード店などでのアルバイトに明け暮れた。

携帯料金とは別に父親からはお金の無心もされたという。「わりぃ、貸してくれないか」と言ってはバイト代をせびってくる。「その月のバイト代10万円を全部持っていかれたときはさすがに参りました」。

父親に翻弄されながらも、アキラさんの成績が落ちることはなかった。東大も合格圏内で、実際に力試しを兼ねて受けた早稲田大学には合格した。しかし、私立大学に進むだけの経済的な余裕はない。浪人覚悟で東大を狙うこともできない。一方でよい思い出のない実家を離れたいという思いもあった。悩んだ末、地方の国立大学へと進学した。

大学では、1人暮らしの生活費は家庭教師や居酒屋のバイト代で、学費は貸与型の奨学金で賄った。それでも生活はぎりぎり。大盛りのペヤング焼きそばを2日に分けて食べ、洗濯は水洗いだけで済ませ、シャワーを浴びる代わりにぬれタオルで体を拭いた。電気を止められたこともあったし、荒れた食生活のせいで時々耳鳴りや動悸にも悩まされたという。アキラさんは「貧乏エピソードとしてはこのころがいちばん大変でした」と振り返る。

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