思春期の子にせこい損得勘定を刷り込む親の盲点 いま話題の「非認知能力」よりもっと大事なこと
「非認知能力」なる言葉が、昨今の教育や子育てに関するトレンドワードになっている。この言葉自体は、社会学者のサミュエル・ボウルズ氏とハーバート・ギンティス氏によって、学力偏重教育に対するアンチテーゼとして1976年にすでに示されていたものだが、現在では、ノーベル賞経済学者ジェームズJ・ヘックマン博士の研究結果に結びつけて紹介されることが多い。
非認知能力が年収や生活の豊かさを左右する
ヘックマン氏は、幼児教育の効果に関する2つの追跡調査結果を分析し直した。すると、幼児教育を受けた子とそうでない子とでは、一時的に知能指数に差ができたものの、その差は成長にともなって消えていた一方で、大人になったときの年収や生活の豊かさには有意な差があることがわかった。
そこから、知能指数のようには測定できない何らかの能力が幼児教育によって身についており、それが長期的な影響を与えているのだろうとヘックマン氏は主張した。その「何らかの能力」こそが非認知能力なのだ。
ちなみに両プロジェクトは、まともな幼児教育を受けられない子どもたちの環境を改善したという話であり、何か特別な英才教育をしたわけではない。日本の幼稚園の教育要領や保育所の保育指針どおりの幼児教育が行われていれば十分なのでさらに幼児英才教育をさせる必要など感じないでほしい。
学校のペーパーテストなどで比較的簡単に数値化できる能力を、一般に認知能力と呼ぶ。IQテストで測れる知能の高さも認知能力だ。しかし、「根性がある」とか「社会性がある」とか「意欲的である」とか「まじめである」などというあいまいな性質は、数値化しにくい。そういうものを非認知能力と呼ぶ。
単に研究者にとって測定しやすいかどうかという観点での表現であり、心理学用語の「認知」(子どもなどが物事を知覚し認識すること)とはまったく意味が異なることに注意が必要だ。文部科学省が掲げる「生きる力」とは、「認知能力+非認知能力」の総合力だととらえられる。
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