思春期の子にせこい損得勘定を刷り込む親の盲点 いま話題の「非認知能力」よりもっと大事なこと

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ヘックマン氏は著書の中で「意欲や、長期的計画を実行する能力、他人との協働に必要な社会的・感情的制御といった、非認知能力」との表現を使用している。これが一般に、ヘックマン氏が意図するところの「非認知能力」の概念であると解釈されている。

OECD(経済協力開発機構)は2015年、非認知的スキルの状態はのちの認知的スキルの状態を予測するが、認知的スキルの状態がのちの非認知的スキルの状態を予測するという関係は認められなかったという内容を含むレポートを発表した。すなわち、非認知能力が認知能力を高めることは期待できても、認知能力そのものが非認知能力を高めることは期待できないというわけだ。

「やり抜く力」は非認知能力の親玉的存在

その非認知能力の中でも、ひときわ重要であるとして注目を浴びたのが「やり抜く力」である。将来の成功を予測する性質としてアメリカの心理学者アンジェラ・ダックワース博士が提唱した「GRIT(グリット)」の訳語だ。大きな目標に対する興味を失わず努力を続けられる気質というような意味で使用されている。

ダックワース氏は、IQの高さよりもやり抜く力の強さが人生に“成功”をもたらすことを明らかにした。単に頭がいいだけの人よりも、粘り強さと情熱をもって物事に取り組める人のほうが人生において良い結果を得られやすいであろうことは、経験上誰もがうなずくところだろう。

やり抜く力の強い人の特徴として、ダックワース氏は著書で、しっかりとした「コンパス」を替えないことや、「やらないこと」を決められる点などを挙げている。つまりしっかりとした「自分軸」をもっているということだ。やり抜く力を向上する方法として、課外活動を最後までやり切る経験や、やり抜く力の強い集団に属することの効果もうたっている。

ところが、「自分軸」については、さらに興味深い調査分析結果を見つけた。拙著『正解がない時代の親たちへ』でも紹介しているのだが、東京都医学総合研究所とロンドン大学の共同研究によって、60年以上にわたる大規模追跡調査の結果を分析したところ、思春期の時点で抱いていた価値観が人生の終盤での幸福感に大きく影響することがわかったというのだ。報告書には次のように書かれている。

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