「名岐アパレル」で連鎖倒産、産地の厳しい現実 新型コロナが直撃、生き残りへ道はあるのか

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そんなギリギリの状況下でも、岐阜のアパレルで存在感を見せる企業がある。1949年に岐阜県で創業した、カジュアルファッションメーカーの「水甚」だ。アメリカのスポーツブランド「ファーストダウン」や、2020年10月には倒産したレナウンが手放した「アーノルドパーマー」の販売権を取得するなど、日本国内で海外ブランドの商品を製造・販売するブランドビジネスを積極展開する。

ダウンジャケットが主力の「ファーストダウン」は1997年から取り扱いを始め、主にGMS向けに展開してきた。だが、今から3年前、あるセレクトショップが同ブランドを紹介。それが大きな転機となり、セレクトショップでの取り扱いが増えた。GMS向けは5000円台が主流だが、いまやセレクトショップ向けは3万円台を中心に展開する。

「買ってもらえる自信があった」

こんな”大変身”が可能となったのも、商品力があるからだ。そもそも縫製工場から始まった水甚は、工場でのものづくりに重点を置いてきた。現在も中国とミャンマーに合弁工場をもつ。

商社を通さずに、資材調達から企画、製造まですべて自前で行えるのも強みだ。ダウン原料の取扱量は「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングに続いて国内で2番目。ダウンジャケットとしてはそれほど高価ではないのに、軽くて包み込まれるような着心地が人気になった。同社の中村好成社長は「袖を通せば、買ってもらえる自信があった。ものづくりの背景があればこその転換だった」と振り返る。

コロナ禍の昨年も、ファーストダウンは前年の売り上げを確保した。ダウンブームが落ち着いた面はあるが、今後も拡大の余地があるとみる。2019年にはブランドの発祥地であるアメリカで展示会も行っており、今後は海外市場を視野に入れ、アメリカや中国、韓国での展開を目指す。

「百貨店に比べて量販店は品質や価格に厳しい。その中でうちは生き残ってきたし、そこに自信をもっている」(中村社長)。昨年の「アーノルドパーマー」の販売権取得も、自ら店舗を持ち、消費者との接点を直接持つため。新しいブランドとの契約には、当たり外れや自社で在庫を抱えるなどのリスクもつきまとうが、そこに迷いはまったくなかったという。「いまは大きなチャンスでしょ」。中村社長はそう言って笑う。

新型コロナ感染の長期化で、アパレル企業を取り巻く環境は一段と厳しさを増している。そんな逆風下、自ら動かなければ、生き残りの可能性は閉ざされてしまう。今こそ、チャレンジが必要な時だ。

山﨑 理子 東洋経済 記者

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やまざき りこ / Riko Yamazaki

埼玉県出身。大学では中国語を専攻、在学中に国立台湾師範大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在小売り・アパレルを担当。趣味はテレビドラマのロケ地巡りなど。

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