東京五輪を仏メディアが「意義深い」と評価した訳 「競技場外で想定外の問題提起があった」と指摘

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体操女子のアメリカ代表、シモーネ・バイルズ選手。メンタルヘルスを理由に体操女子団体決勝を途中棄権したが、種目別の平均台で復帰し、銅メダルを獲得した(写真:Noriko Hayashi/Bloomberg)

コロナ禍という公衆衛生危機の最中に開催された前代未聞の東京五輪を海外、とくに2024年の次期開催国であるフランスはどう見たのか。フランスの日刊紙ル・モンドは「東京五輪はヒーローとなるアスリートとともに記憶されるのではなく、競技場外で過去にない想定外の問題提起があったという意味で意義深い五輪だった」と指摘した。

記事は五輪の旗をパリのイダルゴ市長が閉会式で受け取った翌日に掲載された。それによれば「過去の五輪はアイコンとともに人々に記憶されており、1984年のロサンゼルス五輪では(陸上アメリカ代表の)カール・ルイス選手、1992年のバルセロナ五輪では“ドリームチーム(バスケットボールのアメリカ代表)”、最近ではロンドンや北京、リオ五輪で、かつてないほど世界のスプリントを超越した存在となった自称“生きる伝説”のジャマイカのウサイン・ボルト選手がいた」と指摘した。

では、コロナ禍で開催された東京五輪はどうかといえば、「最も印象的な人物は体操のアメリカ代表、シモーネ・バイルズ選手で、彼女の競技以外の行動が際立った」とし、「ヒーローはいなかったが、歴史に残る五輪だった」とル・モンド紙は総括した。

リオ五輪で4つの金メダルを獲得し、今回も複数種目での金メダル獲得が期待されたバイルズ選手は、メンタルコンディションを理由に体操女子団体決勝や個人総合などを棄権し、自分の身を守った。

繊細で傷つきやすい心を持っている

アスリートが自分の精神状態を優先し、彼ら彼女らの最大の目標とされる五輪の舞台で棄権を表明したことは世界に大きな波紋を広げた。アスリートたちがいかに精神的重圧の中で競技に臨んでいるかを世界に知らしめた五輪だったとル・モンドは分析した。

このことはテニスの4大大会の1つである全仏オープンで、自分がうつであることを理由に試合を辞退した大坂なおみ選手の態度も影響したと報じられた。アスリートといっても人間であり、繊細で傷つきやすい心を持った存在だということを世界中の人々に知らしめたわけだ。

この流れは世界中のスポーツ界に大きな波紋を広げ、アスリートたちのメンタルヘルスへの配慮は、今後のスポーツ大会の重要テーマとして残された。五輪は今後、アスリートのメンタルケア体制を整える必要性が高まっている。

フランスの保守系週刊誌『レクスプレス』は「(コロナの)パンデミック大会といわれた東京五輪は、アスリートたちのメンタルヘルスの問題が不可欠だった大会として歴史に記憶されるだろう」と総括記事で書いた。

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