国際的孤立のスーダンに深く浸透する中国
2011年に南部が独立へ
現在、国際政治情勢の焦点になっているのが、南部の独立問題だ。図式化すると、アラブ・イスラム系政府と南部のブラックアフリカン系、キリスト教徒の対立を軸にしている。南部の指導者層は19世紀から欧州人が宣教したカトリック信者が多い。原油をめぐる権益争いもある。
1983年に政府と南部の内戦が始まり、ダルフール紛争と同じく大きな犠牲者を出した。この紛争が原因で欧米企業が原油開発から撤退する中で、95年からスーダンに進出したのが中国だった。
05年に20年にわたる内戦が終わり、南北包括和平合意(CPA)が結ばれた。原油の権益については政府と南部自治政府が折半することになったが、中国の権益は維持された。11年1月には南部のスーダンからの独立を問う南部住民だけの投票が実施される。この結果、南部が独立すると、アフリカで54番目の新国家が誕生する。ただ、外務省関係者によると、「南部国家の行政能力、治安維持能力、通貨の創出、債務処理や原油権益の配分など難問が山積している」という。
また、アフリカ連合(AU)は、アフリカ内の国境線は原則として、現状を維持する方針という。南部がスーダンから独立すれば、この原則が破られる形になる。アフリカの国境線はイギリスやフランスなど欧州の旧宗主国が人種、民族、宗教などを無視する形で引いた国境線を踏襲していることから、多くの国が内部対立を抱えている。南部独立がこうした他国の内部対立を再燃させる可能性もある。
今後、南部が独立した場合、中国の原油権益がどのような形で維持されるかという関心も高い。スーダンは日本人にはなじみのない国だが、国際情勢を映す鏡になっている。
(シニアライター:内田通夫 =週刊東洋経済2010年6月19日号)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら