「規制委の火山リスク認識には誤りがある」

川内原発審査の問題④藤井敏嗣・東京大学名誉教授

――規制委の田中俊一委員長は、島﨑邦彦委員の発言を引用する形で、「少なくとも10年くらい先から相当大きな地殻変動とか、マグマがたまってきたときに、そういうこと(=巨大噴火)が起こる。当然、その地殻変動が起こるので、とらえられるはずだという話をうかがった」などと、5月21日の記者会見で述べています。5月28日の会見でも「カルデラ噴火はだいたい数万年に一度程度の割合で発生すると言われている。カルデラ噴火の場合には噴火の数十年前ぐらいからマグマの大量の蓄積が起こる」とも語っています。

また5月28日の参議院原子力問題特別委員会では、「数年前に分かるのが望ましい。きちんとモニタリングして判断していく努力は是非とも必要。火山噴火予知連絡会の方とも協力しながら、規制委として(予知を)リードしていく」とも述べています。田中委員長が言うように、モニタリングをすることで、巨大噴火を予知できるのでしょうか。

小規模な噴火でも全電源喪失リスク

火山が噴火すれば、原子炉の冷却に必要な海水の取水もできなくなる可能性がある、と藤井氏は説く

田中委員長は、噴火直前の100年程度の間に急激にマグマが供給されたと推定するフランスの科学者の論文を根拠に、予知は可能だと述べている。この科学者の論文はあくまでも特定の火山の一例を解析したら、100年程度の間に供給されていたようだというだけのものだ。すべてのカルデラ火山において、そうした法則があてはまるとするのは間違いだし、モニタリングで巨大噴火を予知する手法は確立していない。そもそも、南九州のカルデラ火山の地下でどのくらいのマグマが溜まっているかの推定すら、現在の科学技術のレベルではできない。

――規制委では、比較的小規模な噴火のリスクとして、約1万2800年前の桜島薩摩噴火を例に挙げて、火山灰が原発の敷地内に15センチメートル積もることを想定して、シビアアクシデント対策の実効性を検証しました。それによれば、九電による「降下火砕物の直接的影響により安全機能が損なわれていない」との説明が、「火山ガイド」を踏まえていることを確認した、としています。

桜島薩摩噴火は、それ以前の巨大噴火と比べると、はるかに規模が小さい。その場合、火砕流が到達する可能性は少なく、火山灰対策だけが問題となると考えることは正しいと思う。ただし、原発の敷地内に15センチメートルの火山灰が積もったとすると、(桜島から近距離にある)鹿児島市では1メートル以上の火山灰が積もっているはずだ。そうなると、川内原発と鹿児島市内を結ぶ交通網は、寸断されるだろう。

火山灰がどのようなタイプかにもよるが、軽石が多い場合には問題がより深刻になる。降下した軽石がびっしりと海岸線を覆うことになると、原子炉の冷却に必要な海水の取水ができなくなる可能性がある。海からの救援もできなくなる。また、火山灰が付着して送電線が切断することで、外部電源の喪失も起こりうる。大雨が降れば土石流も発生する。そうした中で、原発だけが安全を保ち続けられる保証はないだろう。審査書案からは、そこまで考えて対策を考えているようには読み取れない。

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