「住民の安全性を踏まえない規制委審査だ」
川内原発審査の問題①植田和弘・京都大学大学院教授

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植田和弘(うえた・かずひろ)●1952年、香川県生まれ。京都大学博士(経済学) 、大阪大学工学博士。1994年、京都大学経済学部教授。1997年、京都大学大学院経済学研究科教授、2002年から京都大学地球環境大学院教授兼任、現在に至る。専攻は環境経済学、財政学。
 原子力規制委員会が7月16日に九州電力・川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)に対し、新規制基準に基づく審査で初めてとなる、事実上の“合格証”を出した。現在、8月15日を期限とするパブリックコメント(意見公募)の期間中にあり、それを踏まえたうえで、規制委は正式な合格を判断する意向だ。その後、地元同意や設備の使用前検査を経て、早ければ今秋中にも再稼働の方向との見方が強まっている。
 しかし、川内原発の審査結果や審査プロセスには、問題点も数多く指摘される。審査の対象にはなっていないが、地元自治体が策定し、住民の安全確保に必須となる防災・避難計画に対しても、批判が少なくない。こうした問題点を有識者へのインタビューを通じ、シリーズで検証する。第1回目として、植田和弘・京都大学大学院教授(環境経済学)に聞いた。

――原子力規制委員会による川内原発の審査結果、審査プロセスについてどう考えていますか。

いくつか問題点がある。まず、政府の方針は「安全性の確保を大前提に原発を再稼働させる」というものだが、その場合の「安全性」の中身が問題になる。

政府の説明では、規制委の新規制基準の下での適合性審査にパスすればいいということだが、田中俊一委員長は、適合性審査にパスしただけであって安全と認めるものではない、と説明している。安全性が確保されたかどうかを、誰が責任を持って判断するのかがあいまいだ。

本当に世界で最も厳しい基準なのか

また、新規制基準が世界で最も厳しい基準というのも、かなり怪しい。具体的には、世界ではすでに導入されているコアキャッチャー(原子炉圧力容器外に流出した溶融炉心を格納容器内に貯留する設備)や、二重の格納容器などが、必ずしも審査の要件になっていない。技術的専門家からも「世界最高とは言えない」との評価がある。

仮に世界最高水準の基準だとしても、それで本当に十分なのかという本質的な議論もある。われわれが求めているのは安全性の確保だが、それはリスクの評価と関係している。やはり、福島原発のような事故を二度と起こさないようにしないといけないと思うが、そうしたリスクについて明確になっていない。

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