「住民の安全性を踏まえない規制委審査だ」

川内原発審査の問題①植田和弘・京都大学大学院教授

――原発再稼働が遅れると、化石燃料の輸入代金で貿易赤字が続き、国富が流出したり、電気料金が上昇したり、電力の安定供給にも支障をきたしたりする弊害があるため、「再稼働を急ぐべき」との意見も多い

「原発稼働ゼロのリスク」がよく強調されるが、まず確認しておく必要があるのは、もし不十分な形で原発を稼働させて再び大事故が起こったら、“日本は終わり”と言っても過言ではないことだ。そうなった時のリスクの大きさを考えれば、みんなが十分に合意し、確認して再稼働させる必要がある。拙速は避けるべきだ。

関西電力・大飯原発(福井県大飯郡)について、6月の福井地方裁判所の判決にもあるように、原発が引き起こす被害の大きさを考えると、経済的なベネフィット(効用)よりもはるかに大きいリスクがある。判決では「人格権」という言葉を使っていたが、そもそも経済的効用などとは比較衡量の対象にはならないとしている。それほど原発の重大事故によるリスクは大きいということだ。

原発自体が安定供給の電源か、というとそうではない。何らかの事故が起これば、大量の発電能力を持つ発電所が一度に止まってしまう。止まれば、かなりの期間、検査もしなくてはならない。原発が安定供給の手段というのは間違った理解の仕方だと考えられる。

原発のコストは安くない

また、原発は予測が難しく、コストやリスクの計算が難しい、厄介な電源と言える。電力会社の範囲内での計算だけではなく、社会全体へ与える費用を計算に入れた場合、原発のコストは決して安いとはいえない。

つまり、安全性、経済性、倫理性の3つの点で、原発は稼働に値しない状況にあると考えられる。

さらに、電気代の問題も大事な問題だが、これは電力システム改革(自由化による料金・サービス競争促進)とも結びつく問題であり、中長期的性格の課題として理解すべきだ。

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