「住民の安全性を踏まえない規制委審査だ」

川内原発審査の問題①植田和弘・京都大学大学院教授

規制委の新規制基準をクリアし、早ければ今秋再稼働とも目される、九電・川内原発

これらは原子炉の技術基準に関わる問題点だが、さらに重要なのは、住民の安全性を踏まえたものになっていないことだ。

非常事態を想定しているとは言うが、福島事故の教訓を生かしているとは言い難い。福島事故では、放射能汚染の多いほうへ住民が避難してしまったことや、重度の病気の方々がギリギリの選択を迫られるようなことがあった。が、規制委の審査では、住民の避難計画をしっかり立てることが要件になっていない。

――避難計画に関しては、地元でも多くの問題点が指摘されています。

病気の方々の避難方法や、住民が一斉に避難した際の道路の渋滞の問題など、現在の避難計画に実効性が本当にあるのか、という問題がある。

また、避難というのは、受け入れてくれるところがあって初めて成り立つわけで、本来は「避難受け入れ計画」というものが必要になる。内閣府が地元自治体の避難計画策定を支援することになっているが、避難受け入れ計画のほうは見ていない。そのため、本当の意味で避難できるのかは、何も担保されていない。これでは、新規制基準の適合性審査にパスしたとしても、本来確保されるべき安全性のごく一部しか審査していないということになり、まったく安全性の確保にはなっていない。

誰も審査を信用しなくなる恐れ

――再稼働の判断は時期尚早であると。

 原発の稼働問題は世論調査を見ても反対のほうが多く、(東日本大震災後は)大きな変化がない。ここで不十分な審査基準と審査プロセスの下、責任もあいまいな中で再稼働のゴーサインを出せば、規制委の規制方式が形骸化し、誰も審査を信用しなくなるおそれがある。それは非常にまずいことだ。新規制基準による最初の審査であるからこそ、もっときっちりとみんなの納得が行くようにしないと、再稼働はさらに難しくなるだろう。

――火山の影響審査が不十分だという指摘もあります。

非常に大事な問題だ。新規制基準は(各原発が立地する地域特有の)ローカルな問題に十分に対応するものとなっていない。川内原発の場合は、火山の影響が大きな問題となっている。これまで周辺で起きた巨大噴火を考えれば、川内原発へ影響が及ぶ可能性がある。そのことが十分に評価されたとは言えない。そもそも原発を立地する場所として適切であるのかが問われている。

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