川内原発「避難計画は十分でない」 立地自治体の岩切秀雄・薩摩川内市長に聞く

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九州電力・川内原発(鹿児島県)は全国で初めて、規制委の新規制基準に合格した。立地自治体の薩摩川内市長はどう考えるか。
 九州電力の川内原子力発電所1、2号機が7月16日、原子力規制委員会の新規制基準適合性審査に、全国の原発で初めて“合格“の内定を受けた。正式な合格は8月15日までのパブリックコメント(意見公募)の結果を反映した後で、規制委の審査合格はあくまで再稼働のための必要条件の一つにすぎない。
 今後の最大の焦点は、地元による再稼働への同意だ。地元の範囲については、原発から30㎞圏内の地域を含む自治体すべてを対象にすべき、との意見もあるが、鹿児島県知事は、川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市の市議会と市長、そして鹿児島県の県議会と知事という、4者の承認が必要との見解を示している。
 東洋経済では、立地自治体である薩摩川内市の岩切秀雄市長に川内原発再稼働に関して取材を申し込んだところ、書面での回答となった。かねてより再稼働「容認」派である岩切市長は、再稼働の必要性について、「安全性の確保を大前提としたうえで、当面の間は必要」との考えを示した。
 また再稼働に対する市民の考え方について、「賛成・反対どちらの意見もあることは重々認識している」と前置きしつつも、「一昨年の市長選挙では、安全確保を前提として再稼働を容認するという私と、再稼働に反対するという候補との一騎打ちであったが、投票いただいた市民の方々の8割以上の方が私に投票していただいており、市民から付託を受けたものと考えている」とした。
 一方、同市が昨年11月に策定した、原子力防災・避難計画については、「詳細な内容まで見ると、十分ではない」とし、今後の見直しが必要との考えを明らかにした。「十分ではない」という内容の中身について、改めて確認したところ、緊急避難時における要援護者(寝たきりの高齢者や障害者など)のための寝台車の確保、在宅の要援護者の避難先での対応(病院などの確保)、避難する住民や車両のスクリーニング(放射線汚染検査)の場所の設定、緊急時に使うバスの手配など、との回答が市の防災安全課長を通じてあった。
 放射性物質が大量に原発外部へ放出された緊急事態時の避難計画については、同市議会や市民から、それ以外にも多くの問題点や懸念が指摘されている。
 たとえば、市内各地区単位の避難経路は、有事の風向きが不明な点を考え、2ルートを設定している。が、鹿児島市を中心とした避難先の施設は、現状で地区ごとに1カ所であり、最低2カ所は必要との意見が多い。また、有事における道路の渋滞状況の想定が実効性を欠くとの指摘や、より詳細な避難時間のシミュレーションを求める意見、さらに駅やショッピングセンターなど人が多く集まる施設や企業での避難指示のあり方を見直すべき、といった要求もあった。
 こうした懸念に対する解決策を含め、市民の不安を解消し、避難計画を市民に周知徹底するまでには、まだ課題が多い。岩切市長はかねて「安全性の確保が再稼働の大前提」と強調しており、地元住民の安全対策の要といえる避難計画の課題を十分に解決しないまま、再稼働の同意判断を行うことは難しいと見られる。
 岩切市長に対する質問と回答は以下のとおり。
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