川内原発「避難計画は十分でない」

立地自治体の岩切秀雄・薩摩川内市長に聞く

――他の原発に先駆けて、川内原子力発電所の審査書案が了承されたことを、市長としてどう受け止めているか。

審査書案に対して、外部から科学的・技術的意見を広く募集され審査書が確定するものと認識しているが、今後においても原子力規制委員会においては、厳正かつ慎重な審査・確認を行っていただき、併せて、九州電力においては、適切な対応をお願いしたい。

――川内原発ないし全国の原発の再稼働の必要性に対する考え方は。

4月11日に策定されたエネルギー基本計画に、原子力発電は「重要なベースロード電源」と位置付けられた。が、大量かつ安定的な電力供給を行える原発は、経済活動および国民生活への影響、またCO2(二酸化炭素)などの地球温暖化問題などを総合的に考慮したとき、あくまでも安全性の確保を大前提としたうえで、当面の間は必要であると考えている。

――防災・避難計画については万全と考えているか。要援護者への対応や避難経路、避難場所などについて、県内周辺住民から懸念も上がっているが、今後の対応は。

詳細な内容まで見ると、十分ではない。できるものから、順次解決していく。

――地震や津波、火山など自然災害リスクを、どう考えているか。また、原子力規制委員会に、火山の専門家が入っていないことについてはどうか。

今回策定された規制基準および各評価ガイドは、福島原発事故の教訓およびIAEA(国際原子力機関)などの国際的な基準を踏まえ、特に地震や津波、火山などの自然現象に関しては、従来の基準を強化または新設されるなど、重点が置かれたものと考えている。

なお、火山に関する影響評価ガイドに関しても、2012年にIAEAが策定した、火山に関する安全基準(SSG-21)などを基に策定されており、慎重かつ厳正な審査・評価が行われているものと考えている。

メリットは雇用増や市財政への安定収入

――川内原発誘致以来のメリットとデメリットは。

地元経済へのメリットは、大きく、建設段階と運転開始後の2つに区分されると考えている。

建設段階では、地元事業者の建設受注に伴う雇用増などの波及効果があるほか、運転開始後は関連企業による雇用増や、原発関係者の常駐、さらに定期点検時における作業員の宿泊などに伴う経済効果がある。

また、立地自治体の財政面では、運転開始後、固定資産税を徴しているほか、建設時点から電源交付金(電源立地地域対策交付金)を受けており、これらを活用して、不十分だった公共施設などの整備を推進できたこと、また安定的な収入として、市の財政運営にも寄与しているなどのメリットはあると考えている。

一方、原発立地に伴う地域経済面でのデメリットは、それほど大きなものではないと考えている。

なお、立地自治体としての行政対応の面では、原発事故に対する不安やその危険性に関する市民などの意見に対し、適切に対応しており、ていねいな取り扱いは今後とも必要なことと考えている。

 (編集部注:川内原発は1号機が1979年1月に建設開始、1984年7月に運転開始。2号機が1981年5月に建設開始、1985年11月に運転開始した。建設費は2基合計で約5000億円。2013年3月末現在の社員は288人で、協力会社が約1070人。また、薩摩川内市の2013年度予算では、国と県からの電源交付金を約12.3億円、使用済み核燃料税を3.9億円計上している。電源交付金の累計額は250億円を上回り、九州電力が同市に納めた固定資産税は、累計500億円を超す)

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