木材価格はなぜ昨年末に乱高下したのか 30年来の低落傾向の中で起きた異変

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そもそも、国産材は戦後の復興期から高度経済成長期にかけて、住宅用を中心に需要が拡大し、高値で取引されていた。

1960年代になると、木材輸入の自由化によって相対的に安価な輸入材との価格競争が発生。さらに、住宅着工件数の減少や鉄筋など木造以外の工法へシフトしたことなどにより、全体の木材需要も1996年から減少に転じた。2013年末の価格上昇はあくまで一時的なものであり、長期で見れば、国産材価格は下落傾向が続いている。

価格の乱高下は林業従事者にとっても大問題だ

実際、増税前の受注案件が一巡して住宅着工が落ち着くと、木材価格は再び下落。2014年6月時点では、ヒノキが1万8800円、スギが1万3700円という水準となっている。しかし今後、消費税率10%への引き上げが決まれば、再び住宅の駆け込み需要が生じ、木材価格が高騰する可能性もある。

こうした国産材価格の乱高下があると、「作業用機械の導入や作業員の雇用など、投資計画が立てにくくなる」と林野庁林政部の増田義昭課長補佐は懸念を示す。「持続可能な林業を確立するには、国産材の価格が安定的であることが望ましい」(同)。

価格安定への処方箋

国産材の価格安定には、全体的な需要の底上げが不可欠。その点で期待が集まっているのが、バイオマス発電向けの需要だ。

2012年7月の再生エネルギーの固定価格買い取り制度導入を機に、製紙会社などが木質燃料チップを使ったバイオマス発電所の建設を急ピッチで進めている。農水省はバイオマス用として2020年に600万立方メートルの需要増を見込む。「間伐材が中心だが、木材全体の需要拡大にもつながる」(増田課長補佐)。

木材価格の長期的な下落で苦境に立たされている日本の林業。その再生のためにも持続可能な規模の需要を維持することが求められている。

「週刊東洋経済」2014年8月9・16日号<8月4日発売>掲載の「価格を読む」を転載)

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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