不妊治療の保険適用という吉報に不安も見える訳 新ガイドラインに沿うなら「適用外」の扱いが難題

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男性不妊に関しては、勃起不全に伴う男性不妊にはPDE5阻害薬を使うことが、推奨レベルAとなっている。

「気がついたら、このガイドラインの推奨レベルをもとに『A=保険診療にする、C=保険診療にしない、Bは検討』という話になってしまった。しかし、推奨レベルがCとなった治療法などのなかには、新しい治療であるがゆえにエビデンスが出ていないものも含まれています。そういうものが保険適用外となれば、現在のわが国の保険診療では混合診療は認められていないので、結果的に使うことができなくなります」

杉山さんが現在、日常的に使っている薬の中にも使えなくなるものがいくつかあるそうだ。「もっと慎重に議論すべきだった」と憤りを隠さない。

「不妊治療は個人に応じて柔軟に対応する必要があり、なかにはCと判定された薬を使ったほうがいい人もいる。そういう人は4月以降、“使わない”か、“すべての治療を自由診療にしたうえで使うか”という2択しかなくなります。しかも、3月まで使っていた薬が4月から使えなくなるという可能性だってあるわけです」

これは、治療が受けられないというデメリットにとどまらない。

自由診療への助成金が撤廃へ

自由診療のときには受け取れていた助成金が、2022年4月以降は撤廃される。つまり2022年4月以降自費で受ける場合は助成金なしの100%自己負担となり、これまでよりはるかに高い治療費を支払うことになる。

厚生労働省の研究班の調査によると、自由診療の現在、不妊治療にかかる費用の平均は、体外受精で約38万円、より高度な治療である顕微授精では約43万円だ。こうした負担が重くのしかかる人が出てくるというわけだ。

もう1つは、施設間によって治療方針が大きく異なる現状をどうするかで、これは「標準化されない。各医療機関はこれまでの方針で治療ができる」(杉山さん)という。

治療方針の違いで、最も大きいのは採卵のための卵巣刺激法だろう。

ふつう女性は月に1回、1つの卵子を排卵する。だが、不妊治療では“質のよい成熟卵”を採取することが何より大切になるため、排卵誘発剤卵巣の注射薬や飲み薬を使って、卵胞の発育を促す。これにより複数の卵子を採取することも可能だ。この卵巣刺激に関しては「施設間での考え方がけっこう違う」と前出の長友さんが解説する。

「自然の周期に任せて薬をまったく使わない方法、薬を少しだけ使う方法、しっかり使って多くの採卵を行う方法などがあり、薬を使う期間もさまざまです」

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