不妊治療の保険適用という吉報に不安も見える訳 新ガイドラインに沿うなら「適用外」の扱いが難題

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もちろん、どの施設もその方法が最も妊娠につながると考えて治療方針を立てている。杉山さんが言う。

「保険診療となった後は、それを前提とした治療方針に変える施設もあるでしょう。それがいいほうにいけばいいですが、過剰診療につながる可能性もある。例えば、採卵一つとっても、1個採るのと10個採るのとでは手間だけでなく、必要な設備も違います。これが同じ値段となれば採卵数を減らす方向にいくでしょうし、逆に何個以上なら増やすというのであれば、妊娠につながらないような未成熟卵まで採る施設が出てくるかもしれない」

受精した卵胞を育てる培養器についても、考えなければならない点がある。

今、一部の施設で胚培養に使われているものに、タイムラプスがある。培養器から取り出さずに胚の成長を観察できる装置で、胚にストレスがかかりにくいため受精卵が育ちやすく、妊娠率の向上につながると、まさにいま注目されている装置だ。

だが、これもガイドラインでは推奨レベルCだ。

「ガイドラインが示した推奨レベルで保険適用が決まるとしたら、BやCとなっている治療についてどう扱うのかが、今後の大きな課題」と杉山さんはいう。

実際、工程表でも今後は保険適用とともに保険外併用の仕組みについても検討されることになっている

先進医療活用の可能性も

打開策の1つが、先進医療を活用するという方法だ。先進医療とは保険適用を踏まえて国が指定する医療のことで、治療自体は全額自費となるが、診察や検査、投薬など通常の治療と共通するところの費用は、健康保険が使える。混合診療が可能だ。杉山さんによるといくつかの不妊治療について、この先進医療に認めるかが現在、検討されているという。

世界では健康保険の仕組みが違うものの、不妊治療の保険診療を認めている国が多い。ただ、年齢や回数制限を設けていたり、混合診療を認めていたりなど、事情はそれぞれ違う。ちなみに日本も年齢や回数制限を設ける方針のようだ。

今回、日本生殖医学会に取材を申し込んだが、記者会見がすべてとしたうえで、「それ以上について現段階で個別の取材については当面お受けしておりません」という回答が返ってきた。

「いずれにしても議論をする段階は終わりました。あとは中医協が出す結果を受け止めるだけです。ただ1つだけお願いしたいのは、2022年4月からいきなり健康保険に切り替えるのではなく、治療を続けている人たちには移行期間を設けてほしい。そうしないと施設側も患者さんも混乱します。半年ぐらいは助成金と保険診療どちらでも選べるといった期間があるのがベストです」(杉山さん)

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