文句を言ったら、大げんかになりました。口論の末、激怒したおばさんは店を出て行くことになりました。
小さなことですが、思ったことを主張していく、そして相手を制す、ということを海外でトラブルを乗り越えて行く術として、学んだ気がします。
――すごいですね(笑)。そんな経験、自分にはないな……。金子さんは、いろんな意味で、「日本人ぽさ」がないですよね。
いえ、そんなことも実はないかもしれません。初めて留学したときには、頭の中で「君が代」が流れてきたこともあって(笑)、自分がどこまでも日本人で、日本が大好きだということを強く意識しました。
MBA取得後、ゴールドマン・サックスへ
――金子さんは、上智大学を卒業した後、またフランスに戻って、大学院で経営学を勉強しました。しかし、その後は日本に戻って、米系の投資銀行に勤務しています。このあたりの進路決定の背景はどういったところでしょうか?
2009年にパリでMBAを修了して、帰国するとき、泣いたのを覚えています。人生に何かの区切りがつくとき、私はいつも次に何が始まるのか楽しみで仕方なかったのですが、なぜかこのときだけは泣きました。おそらく、「日本に帰るしかない」という現実が悲しかったのだと思います。
当時はリーマンショック後の就職氷河期で、ビザもない日本人が、フランスで希望の仕事を得るのが難しいことは、火を見るよりも明らかでした。私はやはり、自分のやりたい仕事を選びたかった。
きちんとした専門性を持って、いつかまた挑戦しようと思って、いったん帰国を決意しました。そこで、入社したのが、ゴールドマン・サックスの東京オフィスでした。
キャリアをコントロールしやすい部門別採用
――ゴールドマン・サックスで行っていたのは、どんな業務ですか? 専門性を持とう、という明確な意志があったわけですね?
ゴールドマンでは、信用リスク管理業務として、企業の財務分析能力を培えることが入社前から期待できました。日系企業だと、そもそも部門別採用をしていることが少ないので、自分でキャリアをコントロールしにくいな、と就職活動をしている際に、感じたことを覚えています。
後から振り返ってみれば、プレゼンや会議のファシリテーションなどが英語ベースで、日本にいながら国際的な環境にあったことも、後のキャリア形成を助けてくれました。
――なるほど。確かに、日系だと部門採用は少ないですよね。しかしその後、メガバンクのNY支店へ現地採用で入行します。どこで情報を入手し、どういった選考プロセスで内定が決まったのですか?
1週間ほどニューヨーク旅行に行った際に、ものは試しと、金融業界に強いヘッドハンターにコンタクトを取り、自分のプロフィールに合うポジションを紹介してもらいました。
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