――審査の結論では、姶良など川内原発周辺のカルデラ火山がVEI7以上(VEIは噴火の規模を表す指標)の巨大噴火を起こす可能性について、「平均発生間隔は約9万年」であり、最新の噴火が約3.0~2.8万年前であることから、原発の運用期間中の噴火の可能性は十分低いとしています。
そもそも平均間隔を予測することは難しい。しかも、それはあくまで川内原発が一瞬にして火砕流に飲み込まれてしまうような、超巨大噴火の可能性だ。3万年近く前に超巨大噴火が発生した姶良カルデラでは、その後、マグマの供給が確実に進んでおり、VEI5~6クラスの噴火なら、いつ起こっても不思議ではないともいえる。
風向きにもよるが、川内原発に影響を与えるという意味では、VEI5でも十分に大きい。桜島の大規模の噴火でも、火山灰の影響はある。それで電線がショートしたりして、外部電源が喪失されれば、事故が起きうる。超低頻度でまれにしか起きない超巨大噴火の発生予測よりも、現実的に起こりうる噴火の影響評価をケースに応じてもっと詳細に行うべきではないか。
巨大噴火の時期や規模は予測できない
――モニタリングではどこに問題がありますか。規制委の審査では、過去に川内原発まで火砕流が到達したことが否定できない、加久藤・小林、姶良、阿多のカルデラなどのモニタリングとして、地殻変動などの観測を行うという九電の計画を、火山ガイドを踏まえたものとして了承しました。
噴火の予測にはいろいろな方法があり、火山性地震・微動をはじめ、地殻変動(マグマ溜まりによる地殻隆起)、電気抵抗や重力の変化、二酸化硫黄など火山ガスの量の変化がある。これらによって噴火が起こる可能性はわかるが、噴火の規模はわからないし、噴火が発生した後でどう推移するかもわからない。これが現在の噴火予知の限界だ。
このうち、噴火規模について、ある程度の予測が可能なのは、地殻変動による推定だ。これまでの研究によると、姶良カルデラ内にある桜島火山のマグマ溜まりには、10年あたりおよそ0.1立方キロメートルのマグマが供給されていると推定される。過去2.6万年の間に260立方キロメートル近いマグマ溜まりが形成された可能性もある。この半分の量が桜島火山として噴出したとしても、100立方キロメートル以上の超巨大噴火に匹敵する(100立方キロメートルは琵琶湖の容積の約4倍)。そのため、姶良カルデラにおける超巨大噴火の可能性は、完全には否定できない。
しかも、どの時点で噴火するかは不明で、直前予測は困難だ。最終的にどの程度の規模になるかもわからない。急激な隆起が見られても、噴火には至らず終息するケースもある。つまり、地殻変動モニタリングによっても、巨大噴火を正確に予測することは難しい。それが大多数の火山研究者の見方だろう。