引っ越してすぐにやってきた年老いた家政婦モイラ(フランセス・コンロイ)も謎めいている。ずっとこの館に勤めていたと言い、ヴィヴィアンはモイラを気に入り雇うことにするが、ベンの目には、彼女が挑発的な態度を取る魅惑的な若い女性(アレクサンドラ・ブレッケンリッジ)に見える。超ミニのメイド服を着て掃除をする、若いモイラのエロティックなことといったら! 案の定、ベンはモイラの誘惑にあらがいきれない衝動を感じる。
そんなベンのよこしまな考えを見透かすように、全身に大やけどを負っている男ラリー(デニス・オヘア)が神出鬼没でベンに謎めいた警告をする。
ベンの元を訪れる患者たちも、どこか常軌を逸している。特に、スクールシューティング(学校における銃乱射事件)を夢想する高校生テイトは、ヴァイオレットと親しくなるが、どこか猟奇的な狂気を感じさせて怖い。
そして、館で暗躍する、真っ黒いスーツに覆われた奇妙な動きをする人間(のようなもの)は、いったい何者なのか。全米放送時、この通称“ラバーマン”の中の人が登場人物の誰なのかが大いに話題となった。
言ってみれば、この館はホーンテッドハウスのようなものだ。劇中、世間ではこの家は「殺人の館」と呼ばれて観光スポットになっており、観光ツアーのバスが止まって説明をするほど。奇怪な出来事の連続に、館の歴史を知るべく、ヴィヴィアンがバスに観光客として乗るあたりは、つい笑ってしまう。
実際に起きた「ブラック・ダリア事件」も登場
もちろん、ヴィヴィアンにとっては笑いごとではない。1922年にある医師が建てたこの館では、時代時代で凄惨な事件が起きていたのだ。これら過去の事件も、毎回描かれていくのだが、中にはアメリカで起きた有名な事件を模しているものもある。
最も有名なところでは、女優志願のエリザベス・ショートが胴の部分で切断された遺体で発見された、俗にいう「ブラック・ダリア事件」である。1947年に起きたこの事件は迷宮入りとなっており、ジェームズ・エルロイの小説『ブラック・ダリア』は映画化もされていることから、日本人でも知っている人は多いのではないだろうか。
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