共感でおカネが動くという点では、今、急速に広がっているクラウドファンディングを想像される方も多いでしょう。確かに「セキュリテ」は、インターネット上でプロジェクトや事業への資金を募って集める、クラウドファンディングの一部とみることもできます。
しかし、多くのクラウドファンディングが、モノも資金も戻さない「寄付」か、実際にできたモノなどで返す「購入」であるのに対して、この「セキュリテ」はおカネを分配する、すなわちファンドなのです。また、ミュージックセキュリティーズは、すでに「セキュリテ」の前身となる音楽ファンドの仕組みを2000年から始めており、この業界の先駆者ともいえます。
気になる投資としてのリターンは?
いくら共感をベースに、と言っても、ファンドである以上、最終的には金銭的なリターンを分配する必要があります。しかし、このようなファンドの場合、投資家に共感をベースに投資をしてもらうことによって、事業者がリターンを出さないといけないというガバナンスが緩むのではないかという懸念があります。
「実績としては1~3%程度のプラスリターンが多いです。ものによっては、20%を超えるようなファンドもあります。一方で、償還済みのファンドのうち、2割程度は出資金以下の分配金で終了したファンドもあります。利益を投資動機にしている人は限られているとはいえ、ファンドを利用する事業者の方には収益を上げていただき、出資者の方にも出資金以上の分配をしていくことはとても大切だと思っています」と猪尾さんは言います。
ゼロ金利下でこのリターンは高いという見方もあれば、事業リスクを考えると期待リターンはもっと高いという見方もあり、このリターンに対しては賛否両論あるかと思います。しかしながら、時間軸を持って事業にかかわれるワクワク感を持てたり、雇用が増えるなどの社会的インパクトをリアルに感じられたり、事業の責任者の思いを共有できたりなどの付加価値も考慮すると、このリターンは低いものではないかもしれません。
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