(第34回)【変わる人事編】日本の教育に巣くった「ゆとり教育」の影響は10年続く

 必修の世界史を教えないと言うことにも驚いたが、日本史が必修でないことにもびっくりした。数学、英語、国語、理科、社会と言っても、理科に物理、化学、生物、地学があり、社会にも世界史、日本史、地理、政治経済がある。国語も現代国語、古文、漢文がある。これらの知識や理解は総合的なものである。日本史を学んでいない生徒は古文の理解は低いだろう。理科の教科はそれぞれが数学や物理法則によってつながっている。それなのに選択制にしている。

 その理由はやはり受験重視なのだと思う。得意科目を伸ばすと言うことだろうが、そもそもある教科が好きか得意かは、ある程度まで学ばなければわからない。しかし日本では「化学は点が取りやすい」などというウワサで科目を選択している生徒が多い。そこにも日本の教育のねじれがあると思う。

 大学関係者の中には「リベラルアーツ(要するに教養)を大学教育で復権させる必要がある」と説く人が多い。企業人の中にも、教養の重要性を強調する人がいる。「教養は不要で無駄」と言う人はいない。しかし、教養は復活できるのか? 現在の選択履修で教科を選んできた若者にはそもそも無理。可能としても大学で教えるだけでは無理があると思う。
 リベラルアーツは「総合的な理解力」「考える力」の土台だが、世界史しか勉強していない、日本史しか勉強していない、という学生のバックグラウンドでは「リベラルアーツ」「考える力」は養えないと思う。

 人事は学生を採用し、新入社員を教育指導する立場にある。いわば「ゆとり世代」と向き合う立場だ。ところが先に書いたように、20代、30代初めの人間はゆとり教育を受けている。本人がゆとり世代の一員なのだ。だが自覚する人は少ない。学生の学力低下を嘆いても、自分の社会人基礎力について反省する人はほとんどいない。次回は、学生も若手人事もゆとり世代という現代の採用事情について考えてみたい。

佃 光博(つくだ・みつひろ)
早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年、(株)文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。84年、(株)ピー・イー・シー・インタラクティブ設立。87年、学生援護会より技術系採用メディア「μα(ミューアルファ)」創刊、編集長。89年、学生援護会より転職情報誌『DODA(デューダ)』のネーミング、創刊を手掛ける。多くの採用ツール、ホームページ制作を手掛け、特に理系メディアを得意とする。2010年より、「採用プロ.com」を運営するHRプロ嘱託研究員を兼務。
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