(第34回)【変わる人事編】日本の教育に巣くった「ゆとり教育」の影響は10年続く

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●35歳、30歳以下は小中高のすべてがゆとり教育

 ゆとり教育によって、どの程度中身が薄くなったかを調べてみよう。これは、教育カリキュラムを決める学習指導要領ですぐにわかる。学習指導要領は戦後7回改訂されており、現在は2002年施行のものだ(来年からは脱ゆとり教育のカリキュラムがスタートして大きく変化する。)。

 カリキュラムの中身を見てみるともっとも濃密だった1971年施行のものは、小学校6年間の総授業時数は5821コマ、中学校3年間の総授業時数は3535コマ。それに対し現在は、小学校6年間の総授業時数は5367コマ、中学校3年間の総授業時数は2940コマ。かなり減っているが、実体はもっとひどい。小学校の4教科(国・算・理・社)に限れば、1971年の年間3941時間に対し、現在は2041時間と半分に近い。
 この40年近くの間、学習時間は一貫して削減され続けてきたのだ。勉強していないのだから、学力が低下し続けたのは当然だ。

 ところで、ゆとり教育を論ずるときに欠落している視点がある。現在の生徒、学生への影響を指摘する人は多いが、すでに卒業し現役社会人として働いている人への影響が指摘されることが少ないのだ。そこで本稿ではゆとり教育と年齢の関係を考えてみたい。

現在年齢とゆとり教育の関係
<画像クリックで拡大>
 図は、現在年齢とゆとり教育の関係を5歳ごとに掲示したものだ。ゆとり教育が採り入れはじめられた1980年からを薄い青、改正された1992年からを少し濃い青、全面的なゆとり教育が開始された2002年からを青としている(卒業年齢は浪人、留年を除外している)。

 取締役クラスは50歳以上だろうが、まったく影響を受けていない。部長クラスの45歳、40歳は初期のゆとり教育世代とも言えるが、それほどの影響はない。ただ35歳になると小中高の全期間をゆとり教育で過ごしている。また30歳、25歳は1992年からのゆとり教育の影響を強く受けている。「2004年、2005年あたりから質がガクンと落ちた」という人事の声があるが、この世代を指している。

 大学の4年間を黄色にした部分があるが、これは1990年代から大学の濫造とAO入試のような無試験選抜が始まったことに注意するためだ。つまりここらから大学の中身がすかすかになったといえる。こうして年齢とゆとり教育の関係を整理してみると、20代が受けた教育はかなり薄いものであったことがわかる。

 しかし怖いのはこれからだ。もっともカリキュラムが少なくなった2002年の改訂によって教育を受けている生徒はまだ学校にいる。だからどんなに少なめに見積もっても後10年間はゆとり教育の影響は続くのである。

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