VCターボではマルチリンク機構によりスムースな回転運動が促進され、ピストンの横面が受ける抵抗が75%削減される。結果的に燃焼そのものが安定し、さらに振動や抵抗が低減されるため振動低減を目的としたバランサーシャフトが不要になった。こうした複数の技術が組み合わされ、4気筒であるVCターボエンジンは滑らかな回転フィールを持つ6気筒並みの特性を得ている。
ちなみに、シリンダーの内径(ボア)とピストンの行程(ストローク)のうち、ピストンのストロークは圧縮比によって可変する。8:1の場合は90.1㎜(100%)であるのに対して、14:1の際は88.9㎜(98.6%)。よって、排気量も変化して、8:1の場合は1997ccであるのに対して14:1では1970ccになる。
③e-POWERに用いるとVCターボは新たな一面を魅せる。日本市場におけるe-POWERの販売台数は50万台以上(2021年3月末現在)だが、オーナー評価はいずれも高く、ミニバン、コンパクトカーとクラスを問わず燃費数値も良好だ。
e-POWERの弱点を補強
しかし、改善を望む声もある。発電用のエンジンが稼働した際の振動と騒音だ。車両への負荷や駆動用バッテリーのSOC、さらにはアクセルペダルの踏み込み量に応じてエンジンは自動的に始動するのだが、この際のエンジン回転数が高めであることから、せっかくの電動駆動感覚が削がれてしまうといった内容だ。
現行e-POWERを搭載するコンパクトSUV「キックス」やコンパクトカー「ノート」では初期のe-POWERに改良が加えられ、たとえばロードノイズが高まった際にエンジンを始動するなど工夫を凝らしたが、それでもエンジン回転数は高いときで3600回転からそれ以上の回転数にまで上昇する(1.2Lエンジン)。確かにキックスに試乗していても、「エンジン音が目立つ」と感じたことがあった。
それがVCターボを用いると可変圧縮機構と過給効果によって低い回転数でも求めるエンジン出力が得られるという。
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