このVCターボとは、Variable Compression、すなわち可変圧縮エンジンのことで、そこに過給システムであるターボチャージャーを組み合わせた内燃機関である。型式「KR20DDET」と名付けられた直列4気筒2.0Lエンジンは最高出力272馬力、最大トルク39.7kgf・mを発揮する。
競合の2.0Lターボでは400馬力、50kgf・mをそれぞれ超えるエンジンもあり、日産のVCターボはパワースペックだけを見れば特別に目を見張るものではないが、大きく次の3つの技術に将来性があるとされる。
①は可変圧縮技術の神髄で、従来型エンジンともっとも違う点だ。ここでガソリンエンジンの原理を簡単に振り返ってみたい。
ポート噴射方式の場合、シリンダー内に吹き込まれた混合気がシリンダー内で圧縮され、頂点付近でプラグにより点火され爆発する。直噴方式の場合は圧縮した空気に、とても細かな霧状の燃料を噴射してプラグによる点火で爆発行程を経る。そして噴射方式を問わず、ピストンはもっとも上部にくる上死点を経て、今度は下降し下死点を目指す。
走行シーンに応じて「おいしいところ取り」
では圧縮比とは何か?
シリンダー内のピストンが下死点(BDC/Bottom Dead Center)に位置する際の混合気(空気)が10であったとして、ピストンが上死点(TDC/Top Dead Center)に達した際の混合気(空気)を1とした場合、これを圧縮比10:1の内燃機関と呼ぶ。つまり圧縮比とは、どれくらいの比率で圧縮したのかを示す値だ。
VCターボでは、この圧縮比を8:1~14:1で可変させる。具体的には、アクセルをグッと踏み込むと8:1の状態になりターボチャージャーの過給圧を上げて出力とトルクを大きくする。逆に巡航時など出力があまり必要ない場合には、14:1の状態を保って過給に頼らず燃焼させて燃費数値を向上させる。つまり1つのエンジンで走行シーンに応じて「おいしいところ取り」ができる。
②はマルチリンク可変圧縮機構により実現した。通常の内燃機関が持つコンロッド(ピストン1つに対して1本必要な上下運動させる部品)を取り除き、VCターボでは代わりに3つのリンク機構(マルチリンク機構)を用いてコンロッド機能を代行させる。
3つのリンクは、新たに追加された回転運動を行うVCRアクチュエータに連動したアクチュエータリンクと接続され、要求される値に準じてVCRアクチュエータが正転・逆転して、結果的に圧縮比が可変する。
さらに、マルチリンク機構とVCRによってピストンはシリンダー内において直立した上下運動を行う。一般的な内燃機関ではクランクシャフトとコンロッドの応力によってピストンに横方向の力がかかり、これが抵抗(≒燃費数値悪化)の要因になっていた。
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